論説

【県人会サミット】活動深化の契機に(11月15日)

2023/11/15 08:50

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 在外県人会サミットは、きょう15日から17日まで福島市などで開かれる。各県人会は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生以降、福島の現状を海外で発信し、風評払拭などに貢献してきた。郷里での3日間が従来の活動をさらに充実、発展させる機会になるよう願う。

 サミットは復興状況を把握して伝え、相互の連携も強める目的で、2013(平成25)年に始まった。6年ぶり4回目の今回は過去最多の20カ国・28団体の代表が参加する。はるばる遠方からの来県は古里への愛着心の深さを映している。心から敬意と感謝を表したい。

 内堀雅雄知事は6日の記者会見で「ビジット(訪問)、アップデート(更新)、『ふくしまプライド。』をキーワードに絆を深めたい」と語った。視察先には浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド、双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館、浅野撚糸、会津若松市の関美工堂、末廣酒造などが選ばれた。復興への新たな挑戦の芽吹きを肌で感じ、今後の魅力発信に生かしてほしい。

 英国の県人会「ロンドンしゃくなげ会」は先月、当地の「ジャパン祭り」で県産の果物や加工食品を販売し、いずれも完売した。「普段はどこで買えるのか」といった問い合わせが来店者から相次いだという。日常的に購入できる店が英国にはなく、関係者は「流通網の整備と取扱店の確保が急務」と話していた。こうした事情は他の地域も同じではないか。

 各県人会が世界各地で県産品の安全性を伝えてきた中、日本産食品の輸入規制が多くの国で撤廃された。県は海外での販路拡大を強化している。当地の経済実情に詳しい県人会員らに販売先の紹介や取引の橋渡しを依頼するなどして、協力関係を深めるのも意義深い。顔が見える営みは取引に欠かせない信頼性を高める。

 震災から12年8カ月が経過し、復興と風評の現状や課題は変化している。これに伴い、被災地支援の方向性も多様化している。各県人会の組織力を強化し、世界に張り巡らせたネットワークの有効活用策も模索するなど、新たな視点での活動が期待される。サミットでの議論の深まりに注目したい。(角田守良)