ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を巡る検討は今後、どう進むのか。岸田文雄首相は自民、公明、国民民主の3党で解除についての協議を進める考えを表明した。政府・与党内には従来、慎重論が強かった。一方で、ガソリン補助金による価格抑制策の出口は見通せていない。財政問題も課題として浮上する中、一連の経済対策を総点検し、凍結解除の議論を深めるよう求めたい。
トリガー条項は、レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、約25円の課税を停止すると規定する。ガソリン価格は、全国平均が170円台前半に下がっても、県内は170円台後半で推移するなど、輸送経費がかさむ地方は高め傾向にある。車への依存度が大きい地域の窮状に拍車をかけてきた現状を見れば、凍結解除の可能性は、開かれた場でもっと早い段階で検討すべきだったと思えてならない。
気になるのは、3党協議に至った経緯だ。先月下旬に行われた臨時国会の代表質問で、岸田首相は「灯油や重油が支援の対象外となり、流通が混乱する可能性がある」と慎重な姿勢を示していた。22日の衆院予算委員会で、国民民主党側が凍結解除を条件に補正予算案に賛成する考えを示すと、「検討を進めるのは有意義だ」と応じた。一方で、鈴木俊一財務相は「国、地方合計で1兆5千億円もの財源が必要になる」などの課題を挙げる。凍結解除に踏み切る場合、巨額の税収減を国債などに頼らず、どう賄うのかは現段階で見えてこない。
凍結解除への検討指示が補正予算案に対する野党側の賛成を呼び込んだり、内閣支持率の浮揚を意図したりする戦略でしかなければ、議論は思惑含みでゆがみかねない。凍結解除の効果や問題点を真摯[しんし]に検証し、減収分の補填[ほてん]策も明確にする必要がある。影響を受ける自治体や給油事業者らの負担を踏まえた検討も欠かせない。
凍結解除はガソリンの消費を促し、脱炭素の潮流に逆行するとの指摘がある。ただ、多様な交通手段が整う首都圏などと違い、地方は車なくして生活や経済活動は営めない。こうした都市間格差や地方の現実も踏まえて議論を尽くしてほしい。(五十嵐稔)