
東京電力福島第1原発事故に伴い帰還困難区域となった福島県富岡町の小良ケ浜、深谷両地区で、特定復興再生拠点区域(復興拠点)に指定された集会所や共同墓地、そこにつながる道路の避難指示が30日、解除された。これにより、県内6町村に設けられた復興拠点の避難指示解除が完了した。帰還困難区域のある町村は帰還希望者が古里に戻って暮らせるよう特定帰還居住区域を設定し、計画に基づいて除染を進め、避難指示を解除していく方針。被災地の復興は新たな段階に進む。
富岡町で避難指示が解除されたのは小良ケ浜、深谷両地区の墓地や集会所など6カ所の点拠点と、点拠点につながるアクセス道路計7・2キロの線拠点。住民は居住できないが、道路の通行や墓参りなどが自由になる。
町は解除に先立ち、国道6号沿いの新夜ノ森スクリーニング場で県警と消防の地域防犯防火活動出動式を実施した。解除時刻の午前9時、旧富岡消防署の東側に設置されたゲートが開放され、通行止めの看板が撤去された。パトカーや消防車が小良ケ浜、深谷両地区のパトロールに向かった。
山本育男町長は報道陣に「(小良ケ浜、深谷)両地区の復興を進める上で、大きな一歩を踏み出した。住民の早期帰還の実現に向けて取り組む」と述べた。
町の復興拠点は4月1日に夜の森地区を中心とした390ヘクタールで避難指示が解除され、11月1日時点で64世帯94人が居住している。小良ケ浜、深谷両地区の帰還困難区域は町全体の6・7%。11月1日現在、219世帯523人が住民登録している。
復興拠点は富岡町を含め、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の6町村に設けられた。復興拠点内の居住者数は11月1日現在、大熊町が138人、双葉町が95人、浪江町は10月末現在、24人。葛尾、飯舘両村は人数が少なく、個人の特定につながる恐れがあるとして、非公表としている。
内堀雅雄知事は30日の定例記者会見で「帰還困難区域全体の復興再生に向けた前進につながる」と評価した上で、全ての避難指示解除に国が最後まで責任を持って取り組むよう求めた。