厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した地域別将来推計人口は、人口減少の危機的局面に拍車がかかっている現状を突き付けた。本県人口は2050年に124万7千人と見込まれ、2020(令和2)年の183万3千人から約3割減るとされた。子ども(0~14歳)は減少が著しく、少子化対策の一層の強化を迫られる。
県内の子どもの数は2020年に20万6千人を数えたが、30年後の2050年は10万2千人に半減する。市町村別では、東京電力福島第1原発事故の影響を理由に推計しなかった浜通りを除く全46市町村で減少する見通しだ。中山間地域は減り幅が大きく、自治体の機能維持が大きな課題になる。
内堀雅雄知事は25日の記者会見で「極めて厳しい状況にある」と述べ、強い危機感を持って政策に取り組む決意を示した。県は総合計画の主要施策に「結婚、出産、子育ての希望をかなえる環境づくり」を掲げ、出会いから育児までを包括的に支援している。人口減少の歯止めに一定の効果を発揮しているというものの、少子化抑止には至っていない。他県に先駆けた不妊治療費への補助をはじめ、子育て世代や関係団体の多様な声を踏まえた一段ときめ細かな事業が求められる。
県内市町村は給食費の無償化や移住・定住支援などに力を入れているが、「自治体単独では限界がある」との声が首長から上がる。結婚支援や新婚世帯の住宅費補助など自治体の独自施策に充てる交付金として、政府は来年度予算案に10億円を計上した。市町村などに十分に行き渡るよう手当てする必要がある。国と自治体は車の両輪であり、互いの役割を補完し合える体制づくりが不可欠だ。
政府は「次元の異なる少子化対策」を具現化する「こども未来戦略」を22日に閣議決定し、関連事業費を来年度予算案に手厚く反映させた。児童手当の拡充など子育て世帯の負担軽減につなげたい考えだが、安定した財源確保など懸念は尽きない。
少子化問題は持続可能な社会保障や地域経済などに直結する。今が解決への正念場と捉えて、県民一人一人が自分事として何ができるのかを真剣に考えていかなければならない。(角田守良)