東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで30日に行われたバドミントンの全日本総合選手権決勝。男子シングルスは桃田賢斗(29)=NTT東日本、富岡高出身=が巧みな技術とタイトルへの執念を見せ、2年連続6度目の王座に就いた。女子シングルスは杉山薫(20)=BIPROGY、ふたば未来高出身=が第一人者の奥原希望(28)=太陽ホールディングス=と互角に渡り合った末、相手の途中棄権で初の頂点に立った。
■五輪へ「全身全霊」 2連覇の桃田
元世界王者の桃田が五輪イヤーを前に底力を示した。ネット際の技術やストロークにたけた渡辺航貴(24)=BIPROGY=にベテランらしい試合運びで対抗。長いラリーを挑み、精力的なフットワークでしぶとく拾って相手のミスを誘った。
「技術ではなく強い気持ちでプレーできた」。自身のショットがアウトとされると、映像判定を求めて覆すなど、随所に円熟味も発揮。連続得点のシーンなどでは熱心なファンからの歓声を浴びた。
今年前半は国際大会で早期敗退が目立ち、かつて1位に君臨した世界ランキングは30位台まで急落した。もがく間に国内では新世代が台頭。8月の世界選手権で奈良岡功大(22)=FWDグループ=が銀メダルを取り、入れ替わるように世界ランク2位に躍進した。
一方の桃田も11月は韓国で2年ぶりにワールドツアーを制し、続く熊本マスターズでも健闘するなど復調基調で全日本を迎えた。順当に勝ち上がり、奈良岡との準決勝は「新旧エース対決」と目されたが、相手の棄権で実現しなかった。
五輪切符を巡るレースは年明けに再開し4月まで続く。パリへの道は「厳しい状態」と認めた上で「可能性がある限り全身全霊でトライする」と欲を隠さなかった。遠征先での交通事故や後遺症、メダルを期待された東京五輪の敗退―。挫折のたび、はい上がってきた男の瞳は前だけを見ている。
■急成長 世界に視線 初優勝の杉山
「国内女王」のタイトルは相手の途中棄権という思わぬ形で舞い込んだ。杉山は全日本の決勝に立つのも、奥原と公式戦で対戦するのも初めてだったが、堂々とプレーし続けた結果、勝利の女神がほほえんだ。
全日本で優勝5度を誇るリオ五輪銅メダリストに対し、「自分のプレーを出し切り、相手のスマッシュも拾えれば」と自然体かつ真っ向勝負で挑んだ。
第1ゲームは粘り強く追いかけたものの、17―21で落とした。第2ゲームも序盤は先行されたが、思い切りのよいスマッシュを振り抜くなど8連続ポイントを奪い、ゲームカウントをタイの1―1に持ち込んだ。
「ほとんどバドミントンばかりやっていた」というふたば未来中高の6年間を経て、2022(令和4)年にBIPROGYに進んだ。各種大会で成長ぶりを示してきた。全日本での優勝は日本代表入りへの弾みとなる。
「優勝できてうれしい」とはにかんだ表情を浮かべた成長株は、来年の目標を問われると「世界でも活躍できる選手になりたい」と意欲を口にした。
■福島県民に勇気と感動 内堀知事
富岡高、ふたば未来学園高出身選手の優勝を受け、内堀雅雄知事は「国内最高峰の大会で数々の熱戦を制して頂点に立ち、復興に向けて挑戦を続ける私たち県民に大きな勇気と感動を届けてくれた。今後も不屈の『富岡魂』を胸に活躍することを心から願っている」とのコメントを発表した。