分水嶺(1月20日)

2024/01/20 08:50

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 石川町の中心部から古殿町方面に県道を進むと、南北に延びる谷と出合う。中央部を「谷地竹ノ花分水嶺[れい]」が東西に走る。通常、山の尾根にある分水嶺が、ここでは谷の低い場所に存在するため、地形学の研究者らの興味を引き付けてきた▼分水嶺を境に片方に降った雨は今出川や阿武隈川、もう片方は組矢川や鮫川を経てそれぞれ太平洋に注ぐ。わずか数センチの違いで河口は約150キロも離れる。かつてその分かれ目は別の場所にあった。隆起や浸食を繰り返し、特殊な地形が生まれた▼水の流れが分水嶺という一筋の線に左右されるように、人も地上に引かれた見えない線に翻弄[ほんろう]されてきた。ウクライナは、ロシアの侵攻開始から2年を迎えるが、停戦、和平の道筋は見えない。パレスチナ自治区ガザでは、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が続き、1万人もの子どもの命が奪われている▼3年余り前、分水嶺上に住民有志らの手で公園が整備された。園内の幸せの鐘には、二手に分かれた水が海で再会するよう願いが込められている。急流の先には、分流が溶け合う太平の海原が広がっているはず。平和を祈る鐘の音よ、あらゆる境を越え今年こそ高らかに鳴り響け。<2024・1・20>