
学法石川には監督が短い期間で代わった時期があった。選手を育ててくれる人物はいないか―。仙台育英を春夏19度の甲子園出場、2度の準優勝に導いた佐々木順一朗監督(64)を招へいした。2018(平成30)年11月、名将の下で立て直しが始まった。
最初に求めたのは精神面の成長だ。「本気になれば世界が変わる」などの前向きなスローガンを掲げ、「いいぞ。できてる」と褒めて伸ばす方針を採用。髪型は多数決で選ばせ、練習は自主性や効率を重視した。時代や球児の気質の変化を踏まえてチームをつくった。
主将の小宅善叶(2年)は「厳しさの中に楽しみを見いだせる。めりはりのあるチーム」と愛着を口にする。指揮官の実績や部の雰囲気に引かれ、県外から学石の門をたたく部員も少なくない。
身体能力の向上にも重きを置く。インターネットでさまざまな投打の練習法や技術論に触れられるが、自分に合う方法を選び、実践するためには体づくりが欠かせない。懸垂や逆立ち、あおむけからの「跳ね起き」などで速さと力を培った。
心身ともたくましさを増した選手は就任翌年の2019年と2021(令和3)年の春季県大会で準優勝するなど、甲子園に一歩ずつ近づいた。
近年のOBからはプロに進む逸材も現れた。黒川凱星(かいせい)選手(19)は2022年、ロッテから育成4位で指名された。「監督からは自分で考える大切さを学んだ。プロの戦いに生きている」と感謝する。
現チームは秋季東北大会で4強に進んだが、打率は2割台に低迷。甘い球を見逃す傾向があると分析し、冬の打撃練習ではどんな球も打ち返すよう指示している。「次が『運命の1球』かも知れない。まずは打つ。球の見極めはその先だ」と狙いを明かす。
試合では相手の特徴を捉え、最適な戦略を探り出す。「面白い打者がいる。打線がつながればいい流れになる」。教え子の力を信じ、久しぶりの聖地で采配を振る。仙台育英での甲子園の戦績は29勝19敗。センバツに節目の「30勝」が懸かるが、ナインに重圧をかける気はない。「楽しくプレーしてほしい」と選手が伸び伸びと躍動する姿を思い描いている。