初の五輪、次への糧に バド男子複 保木、小林組(富岡高出身)予選最終戦

2024/08/01 08:27

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【パリで本社報道部副部長・鈴木宏謙】日本男子勢「史上初」メダルへの挑戦が終わった。パリ五輪バドミントン男子ダブルスの保木卓朗(28)、小林優吾(29)組=トナミ運輸、富岡高出身=は31日の1次リーグD組最終戦に0―2で敗れた。満員の観衆の前で4試合を戦い1勝3敗。富岡一中学時代から共に歩んだ2人が初めて臨んだ夢の舞台は、苦しさと手応えが入り交じる空間だった。「今の自分たちができることはやれた」と早い敗退を受け止めた。

 世界ランク2位のデンマークペアに退かなかった。第1、第2ゲームとも1点を争う展開に。保木の巧みなサーブや粘り強いレシーブで大柄な相手を揺さぶると、小林が「代名詞」の力強いスマッシュを要所で決めた。重圧から解き放たれたように随所に好プレーを披露。2個目の白星には届かなかったが、49分の熱戦を終え、肩を抱き合った。

 ダブルスの1次リーグは上位2組が準々決勝に進む。五輪の重圧から精彩を欠いた初戦、台湾ペアに喫したストレート負けが響いた。「バドミントンを楽しむ」(保木)、「自分たちの良さを出す」(小林)と思い直した第2戦は米国ペアに快勝。30日の第3戦で中国ペアに競り負け、1試合を残して敗退が決まった。

 世界ランキング上位が集う激戦区。少しの歯車の狂いが、力が拮抗する紙一重の勝負で勝機を遠ざけた。4試合を終え、保木は「この舞台で勝つ人は、どんな相手もはねのける」と力不足を認め、無念さをかみしめた。

 山口県出身の保木、宮城県出身の小林は富岡一中で出会った。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きたのは中学の卒業式の日だ。避難生活を経て猪苗代町にサテライトを置いた富岡高に進学。1年の秋にペアを組み、3年時の全国高校総体ではダブルスと団体の2冠を果たした。

 実業団のトナミ運輸に進むと、2021(令和3)年には日本勢で初めて世界選手権を制し、世界ランク1位にも立った。

 「震災が僕らを強くしてくれた」「福島を思って戦う」と言い続けてきた。競技者としての原点への感謝を胸に結成13年で最高峰にたどり着いた。史上初の栄誉は持ち帰れずとも、歩んだ道のりと戦いぶりは多くの人の胸に刻まれた。