富岡ペア、最後は笑顔 バドミントン混合複、渡辺・東野組 成長示し「やり切った」

2024/08/03 01:35

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【パリで本社報道部副部長・鈴木宏謙】「先輩」と「勇大君」の2度目の挑戦は、うれし涙と笑顔で幕を閉じた。パリ五輪バドミントン混合ダブルスで2大会連続の銅メダルに輝いた渡辺勇大(27)、東野有紗(28)組=BIPROGY、富岡高出身=。福島県富岡町で出会い、猪苗代町、実業団と13年間、互いを高め合ってきた。敗戦のショックから一夜で立ち直り、3位決定戦を勝ち抜いた。メダルの色は前回と同じでも、渡辺は「3年間で確実に成長できた。五輪でも自信を持ってプレーできた」と胸を張った。

 世界ランキング1位の中国ペアに敗れた準決勝から丸一日たたない中、メダルマッチを迎えた。目標だった金メダルへの道は断たれたものの、準決勝の直後に「最後までやり切る」と心を一つにした。「2人で楽しんで頑張ろう」と前を向いてコートに入った。

 第1ゲームから綿密な声がけと息の合った連係が生む「ワタガシ」ペアらしい好プレーを随所に見せた。韓国ペアの強打を粘り強く拾ってはミスを誘い、主導権を譲らず21―13で先取。第2ゲームは一進一退からジュースにもつれたが、最後は22―20で勝ち切った。

 前回大会で混合・男子とダブルス2種目に出場した渡辺はパリに向けては混合1本に絞り、プレーの精度を磨いた。東野も前衛の重要性が増す潮流を踏まえ、バリエーションを増やそうと腐心した。世界で勝つ確率を高める策を模索してきた。

 北海道出身の東野は2009(平成21)年、東京都出身の渡辺は翌年にバドミントンの強豪・富岡一中に入り、本格的に競技を始めた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う避難を経て、猪苗代町で活動を再開。以来、国内外の大会をともに戦ってきた。

 開幕前の7月は男子ダブルスの保木卓朗(28)、小林優吾(29)組、女子シングルスの大堀彩(27)を含む富岡高出身の5選手で富岡、猪苗代両町での壮行会に臨み、「第2の故郷」と語る福島県や母校への思いを高めてきた。

 渡辺が「5人が必死に戦う姿が町民、県民の皆さんに少しでも届けばと話し合ってきた」と福島への思いを明かすと、東野は「負けてしまったホキコバペアの思いを背負い戦った」と結束を強調した。

 東野は1日が誕生日だった。1日遅れで手にした28歳の初勝利に「本当に勇大君と出会えて良かった」と感慨に浸った。渡辺は「五輪という舞台でもう一回表彰台に上がれてうれしい」と感謝の言葉で締めくくった。