衆院選2024

福島県内選挙区最前線ルポ 4区 組織固め勝負の鍵 斎藤氏 連合と融和が必須 坂本氏 前職と協調不可欠

2024/10/19 08:50

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 区割りが変わり浜通り全域が一つになった福島4区は、立憲民主党の新人斎藤裕喜(45)と自民党の新人坂本竜太郎(44)が真っ向からぶつかっている。ともに公示が迫ってからの立候補表明となり、短期決戦での浸透に躍起だ。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から13年余り。両陣営とも南北に広い新選挙区で組織の票固めが勝負の鍵を握る。(文中敬称略)


 斎藤は18日、大票田の福島県いわき市をくまなく遊説して回った。「復興が実感できない」と声を張り、政治改革の必要性を強調した。

 富岡町での会社経営の経験を基に被災地の生活基盤の不備を指摘し、政権の復興施策を批判する。立民、国民民主、社民の各党県連と県議会会派県民連合、連合福島による5者協議会を軸に野党系の地方議員が運動を支える。公示後には立民党本部から幹事長小川淳也が応援に駆け付けた。

 2021(令和3)年の前回衆院選で、いわき市を中心とする旧5区は事実上、野党統一の共産党候補が自民と戦った。立民は予定していた候補者を取り下げ、「非自民・非共産」を掲げる連合福島傘下の組合員は自主投票となった。

 立民県連幹部は今回の公示前、連合に前回の経緯を改めて説明し、謝罪した。いわき地区の組合員約1万2千人の票をまとめるのに融和は必須だ。第一声には連合福島会長が駆け付け「雪解け」を演出した。地区連合の関係者はつぶやく。「投票まで時間はわずか。過去は水に流すしかない…」

 ただ、立民として前回衆院選を戦っておらず票が読めないとの不安が一部にある。斎藤に政治経験はなく立候補表明は9月半ば。知名度が高いとは言えない。党員がいない双葉郡での票の掘り起こしに注力する。

 選対本部長の県議古市三久は「短い期間で名前と主張をどれだけ知ってもらえるかで勝負は決まる」と気を引き締める。

   ◇    ◇

 坂本は18日、飯舘村と南相馬市に選挙カーを走らせた。「復興の歩みを止めるわけにいかない」と熱く語り、政権継続を訴えた。

 陣営は復興予算の確保など政権与党の実績を訴え、農業関係などの友好団体の組織票を入念に固める。公示日には党総裁で首相の石破茂がいわき市に入った。衆院議員を務めた父・剛二(故人)の地盤を足掛かりに自身が築いた人脈を生かして選挙戦を進める。

 陣営は、勝利には今回立候補せずに引退した元復興相の前職吉野正芳(76)の支援が欠かせないとみている。吉野と剛二は旧5区で党公認を争った間柄だ。吉野は過去2度の「国替え」を強いられた経緯がある。吉野を支援してきた関係者は「後援会には素直に応援できないという人もいる」と「因縁」を打ち明ける。

 吉野は引退に当たり後継の選定には関与しないとしつつ、坂本の事務所開きに「被災地出身であることを常に意識して」との激励の祝電を寄せ、「協調」を示して見せた。陣営は議席の確保に向け引き締めを図る。陣営幹部は自らに言い聞かせる。「心を一つに…」

 4区の候補者の中では最も遅い10月に入ってからの立候補表明となったのが懸念材料だ。自民派閥の裏金問題への世論の厳しい目もある。新たに選挙区に加わった北部の旧1区での認知度向上に努める。

 選対本部長の県議太田光秋は「坂本の人柄をアピールし、組織力を生かしてきめ細かく支持を広げていく」と力を込めた。

   ◇    ◇

 共産の新人熊谷智(44)は18日、相馬市などで演説した。福島第1原発の廃炉や政治とカネの問題を巡る政府の対応を批判。「(原発事故に)政府が責任を果たすべきだ」と述べた。


■立候補者

斎藤 裕喜  45 ☆立民  新

熊谷  智  44  共産  新

坂本竜太郎  44 ☆自民  新

(届け出順、敬称略。☆は比例東北と重複立候補)