衆院選2024

福島県内選挙区最前線ルポ 3区 公示直前構図一変 小熊氏 攻勢へ戦略再構築 上杉氏 出遅れ挽回に躍起

2024/10/20 09:31

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 福島県会津地方全域と県南地方が一つになった3区は「政治とカネ」の問題で自民党の候補を取り巻く状況が二転三転し、公示直前にようやく構図が固まった。県の半分の面積を占める広大な選挙区で立憲民主党の前職小熊慎司(56)は攻勢へ戦略を練り直し、自民党でなく無所属で立った前職上杉謙太郎(49)は出遅れの挽回を期してそれぞれ舌戦に臨んでいる。(文中敬称略)


 小熊は公示後初の週末の19日、県南を地盤とする上杉を意識するかのように白河市周辺などを遊説した。「汗を流して働く人々が恩恵を受けられない政治を打破する」と語気を強めた。

 公示直前に相手が上杉に決まった。これまでの衆院選で県南で着実に支持を広げてきた上杉に対し、陣営関係者は「会津での圧勝が必須だ」と気を引き締める。会津で前回より4千票多い8万票以上を目標に据えた。大票田の会津若松市や出身地の喜多方市で浮動票を狙い、政治改革の必要性を訴える。郡部では昨秋の県議選で初当選した南会津、河沼両郡の野党系県議らの組織を生かし、保守系の農業票などを切り崩す。

 県南では区割り改定を受けて新たに設けた後援会を足掛かりに白河地区連合や無所属の市町村議らの支持者らへ浸透を目指す。「賃上げや社会保障の充実などの政策を進めるには政治の信頼回復が大前提」と政治とカネの問題と経済対策をセットで主張し、与党に対抗している。

 懸念は会津の候補との対戦を想定していたことで県南での露出が不足していたことだ。県南は今回2区に立候補した立民の前職玄葉光一郎(60)が強固な基盤を築いていた。玄葉支持者から地域に顔を出す回数を比べられることもあるという。陣営は地道に電話で支持を呼びかけ、玄葉票を死守するのに躍起だ。

 総合選対本部長の県議瓜生信一郎は「3区全体で相手を引き離し、政権交代を目指す」と気合を入れる。

   ◇    ◇ 

 「30年後の会津に責任を持ち、新たな未来をつくる覚悟がある」。上杉は19日、小熊のお膝元である南会津郡や大沼郡などで演説し、政権与党として地域を守る決意を強調した。

 立候補表明は公示の2日前だったが、陣営関係者は「着実に与党支持層の受け皿になっている」と手応えを口にする。自民党県連の全面支援を受けており農業、建設、医療関係団体などの推薦を取り付けた。会津、県南の党支部もフル稼働し準備不足を埋める戦略だ。県南では前回獲得した約3万4千票以上を目指す。知名度向上が課題の会津では会合にこまめに顔を出すなどの運動を展開する。

 政治資金収支報告書への不記載で自身は比例代表での立候補を断念し、3区に立つ予定だった前職菅家一郎(69)も不出馬を決めた。「厳しい反省の下、政治の信頼回復に努める」。再始動の決意を法定ビラに記した。前回1万6千票余りを得た白河市での演説会で支持者に頭を下げ、与党系議員の必要性を訴えた。

 ただ、出遅れはさまざまな面に影響している。ポスターを掲示に張り始めたのは公示の2日後。白河市の事務所開きも2日後になった。「異例ずくめだ」と陣営幹部は悲鳴を上げる。中央で自民と連立を組む公明からの推薦もない。選挙期間中の9日間は相手の地盤である会津での遊説に充てるなど必死だ。

 選対本部長を務める県議渡辺義信は「会津で食らい付き県南の上積みで勝ちきる」と意気込む。

   ◇    ◇

 共産党の新人唐橋則男(63)は19日、南会津町などを選挙カーで巡り、消費税の引き下げや農林予算の拡充など暮らしに寄り添う政策を主張。「裏金の解明が必要だ。自民党政治を大本から変える」と述べた。


■立候補者

小熊 慎司  56 ☆立民   前④

唐橋 則男  63  共産   新

上杉謙太郎  49  無所属  前②

(届け出順、敬称略。丸数字は当選回数。☆は比例東北との重複立候補)