衆院選2024

【2024ふくしま衆院選 託す思い】農林水産業 中小農家の支援不十分 水産物輸出安定的に

2024/10/23 12:00

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稲穂の状況を確認する和弘さん(左)と憲和さん。中小規模の農家支援の強化を求める
稲穂の状況を確認する和弘さん(左)と憲和さん。中小規模の農家支援の強化を求める

 資材高騰に異常気象、風評対策…。福島県の基幹産業である農林水産業の振興には課題が山積している。各党の公約には生産資材の安定供給や担い手の確保、輸入規制の撤廃など多岐にわたる課題解決策の文言が並ぶ。生産者らは息の長いなりわいを実現できる確実な政策実行を求めている。


 「大規模農家だけが生き残っても産地として継続できない。中・小規模農家を支える仕組みが不可欠だ」。会津坂下町の稲作農家小林和弘さん(53)は昨年就農した長男憲和さん(22)と共に、黄金色に染まった稲穂を見つめながら生産者支援の強化を求めた。

 業者間でコメを売買する際の2024(令和6)年産米の相対取引価格は31年ぶりの高値を付けた。生産コスト増に悩む農家にとっては明るい話題だが、値上がりは消費者の買い控えにつながる懸念がある。各党は規模の大小にかかわらない農業経営の底上げ、多様な経営ニーズに即した支援などを訴える。しかし和弘さんは本県をはじめ地方の農業を支えてきた中・小規模農家の支援が不十分と感じてきた。

 数年前まで推し進められたコメの生産調整(減反)政策などを通じ、補助金対象の作物栽培に転換した農家の姿も見てきた。「補助金のためではなく、良いものを作ろうという生産者の思いに応える施策が重要だ。地方の実情を国に提言できる人が議員になってほしい」と願う。

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 福島市の果樹農家安斎秀俊さん(44)は資材高騰に加え、近年の気候変動の激しさに頭を悩ませる。ただ、各政党や候補者の訴えからは高温障害への対応や新品種の開発など具体的な公約が十分に聞こえてこないと感じる。「急激に変化する生産現場の実態を政策にしっかり反映してほしい」と求める。

 JAふくしま未来(本店・福島市)の今年度のモモの販売額は初めて80億円を超えたが、猛暑で収量が減った農家も。安斎さんもその一人だ。収穫時期は年々早まり、試行錯誤の連続。農業資材価格はここ数年で約3割高騰し本来はより手をかけたい部分の農薬や肥やしを削らざるを得ない状況という。「労力に見合った収入が得られなければ、農家の意欲は下がる一方だ。前向きに農業に取り組める政策の実行を求めたい」と話す。

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 東京電力福島第1原発事故に伴う県産食品の海外販路を巡り、中国が処理水海洋放出後に停止していた日本産水産物の輸入を再開すると日中両政府で合意するなど回復の動きが進む。

 相馬市の漁師斎藤智英さん(43)は「外交面で強みを見せ、安定的に輸出できるようにしてほしい」と各立候補者の訴えと政党の公約に目を光らせる。今も風評の影響は色濃く残ると感じている。公約には輸入規制撤廃への働きかけが盛り込まれており、粘り強い外交交渉が求められる。「われわれは漁業の回復を目指して頑張っている。震災前の姿に戻るよう、力を尽くして」と訴える。