東日本大震災・原発事故

次期復興方針早期策定を 交付金など見直し議論受け 内堀福島県知事 政府に要望 「国の責任」言及 支援継続求める

2024/11/27 09:03

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 第2期復興・創生期間後の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を巡り、福島県の内堀雅雄知事は26日、福島県の現状に即した施策などを反映した次期「復興基本方針」を早急に策定するよう政府に要望した。14日の行政事業レビューで見直しを検討すべきとされた福島再生加速化交付金や自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金などについて、支援内容や予算の長期的な維持を求めた。法に定められた「国の責任」に言及し、2025(令和7)年度を最終年度とする第2期終了後も、長期的に必要な事業などを確実に行うよう国に強く訴えかけた。


 内堀知事が関係省庁に行った「ふくしまの復興・創生に向けた緊急要望」の主な内容は【下記】の通り。福島県の復興・再生は「国の社会的な責任を踏まえて行われるべきもの」と福島復興再生特措法に定められていると強調。地元の声に耳を傾け、第2期終了後を対象期間とする新たな復興基本方針に、福島県が抱える課題と復興に必要な取り組みを反映させるよう求めた。

 政府の行政事業レビューで見直しを検討すべきとの意見が取りまとめられた加速化交付金については、被災地の復興に不可欠な事業との認識に立ち、現行の仕組みの下での長期的かつ十分な予算の確保に加え、制度の拡充も視野に入れるよう要請した。企業立地補助金についても、現行の仕組みでの継続と十分な予算確保を求めた。

 各省庁への要望は冒頭を除いて非公開で行われた。終了後、取材に応じた内堀知事によると、伊藤忠彦復興相は原発事故被災地の復興について「長い闘いとなり、中長期的な対応を行っていく必要があることを肝に銘じ、これからもやっていく」との認識を示した。武藤容治経済産業相は企業立地補助金に関し「避難地域ごとの状況が違うため、一律に終期を設定することはない。自治体が産業振興、経済振興のため企業を誘致し、活性化を図るために最大限に力を注ぐ」と応じた。浅尾慶一郎環境相は除染土壌の2045年3月までの県外最終処分を巡り「法律上の約束でもある。しっかりと履行するため省として取り組む」との姿勢を示した。

 今回の緊急要望の背景には、震災と原発事故からの復興に対する国の「風化」への県の懸念がある。14日のレビューでは復興事業に関し、一律で国が負担する支援内容や対象地域の見直し、終了すべき時期などが「前触れなく」(県幹部)提言され、「政府内で復興に対する温度差が生じている」と動揺が市町村に広がった。

 1年4カ月後に迫った第2期終了を契機とする事業や予算の大幅縮小を防ぐため、復興に携わる「国の責任」を要望で打ち出すとともに、予算編成などの前提となる復興基本方針への地元意向の反映を強く求めてくぎを刺した格好だ。

 内堀知事は要望後、「地元の声を大臣に訴え、認識を共有できた」と述べ、関係省庁と必要な予算や事業などの議論を続ける考えを示した。


■内堀知事による主な緊急要望項目

▼国の社会的な責任を踏まえた福島県の復興・再生の推進。復興に前面に立ち、最後まで責任を持った取り組み

▼第2期復興・創生期間後の復興の基本方針の早期提示。策定に向けた地元の声の傾聴、復興に必要な取り組みの反映

▼復興庁を司令塔とした関係省庁の連携、現場主義の徹底。復興・創生に向けた取り組みの県内全域への一体的・中長期的な推進

▼福島再生加速化交付金の現行の仕組みでの長期的かつ十分な予算の確保。制度拡充などを通じた柔軟で使いやすい仕組みの構築。福島生活環境整備・帰還再生加速事業の現行の仕組みでの継続

▼農林水産物の価格差の回復、県産品などの流通促進と販路回復・定番化、観光誘客の促進など、県全域を対象とした十分な予算確保

▼2019年策定の「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」の早期改定に向けた議論の促進

▼自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金の2025(令和7)年度以降の現行の仕組みでの継続と十分な予算確保、市町村の意見や地域の実情を踏まえた運用