東京電力福島第1原発2号機で、昨年9月に停止したデブリ採取装置は、伸縮型のパイプをつないで先端に爪形の装置を取り付けた釣りざお型装置だ。停止後2カ月ほどでカメラを交換して再び動き出し、デブリ取り出しが行われた。
今回のトラブルは、パイプをつなぐ時の作業ミスと、2日間高い放射線場に装置を置いたことで、カメラが壊れてしまった2点だ。
開発された本体の釣りざお型装置は正しく作動した。
「本体は優秀な技術者が考えるのでトラブルは起こらず、周辺で起きやすい」。
1995年、高速炉「もんじゅ」の蒸気発生器配管からナトリウムが漏れ燃焼した。ナトリウムは水分と反応し燃焼する。
蒸気発生器は、ナトリウムと水が交差して、流れるので、大型模擬装置で安全性を確認したが、火災は出入り口配管の温度計さや管から起こった。実機のナトリウム速度は速く、強い流体振動が起きた。
初めに述べたパイプ接合のミスは、高線量下の緊張した作業員のヒューマンエラーだ。この分野の専門家が事前に見れば、接続部を色分けする等を提案したと思う。
次のトラブルは、カメラの耐放射線性能だ。今までの格納容器内部の観察では、短時間か、日をまたぐ場合は装置を低線量のエリアに移動していた。今回のカメラは、高線量下に45日間ほど耐えられる高性能カメラだったが、2日間高い線量場に置かれて映らなくなった。
カメラの性能はカメラメーカーのノウハウで、設計情報は非開示だ。東電は社内外の情報収集を行っている。耐放射線性能が高まれば、作業効率が上がるので、調査結果を期待したい。
一方、廃炉工法のデザインレビューは、国際廃炉研究開発機構(IRID)が担当していた。電力OBや各メーカーの現場知識豊かな経験者が集まる組織で、各々のプロジェクトのデザインレビューをし、情報は各組織で共有された。「現場情報を共有するワンチーム」だ。
ただ、各社ノウハウの開示の困難さから、メーカーの枠を超えた意見交換が難しい場合もあり、レビュー後にトラブルが起こることもあった。
IRIDは、設立10年目の2023年夏をもって解散する予定だったが、ロボットアーム装置の開発終了を待っており、その役割は原賠機構(NDF)に移行中と聞いている。
今後、廃炉工事はゼネコンも加わり、大切なフェーズに入る。廃炉工事が始まった時、国は「世界の英知を集めて臨む」との趣旨の発言をした。
今度、IRIDの役割を引き継ぐのは、東電自身とこれを支援するNDFだ。
ぜひ、メーカーの枠を超えて、「日本の英知」を結集した「現場中心のワンチーム」を結成し、この困難な工事が一日も早く終わるよう進めてほしい。
(角山茂章 会津大学元学長)