論説

【国の予算打ち切り】責任の風化許されない(2月7日)

2025/02/07 09:25

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 県が東京電力福島第1原発事故の風評対策として取り組む消費者交流事業について、消費者庁は全額予算措置を今年度で打ち切る方針を決めた。県は、効果があるとして継続を求めたが、受け入れられなかったという。被災地の思いとは懸け離れた対応と言うほかなく、原発事故に対する国の責任の風化を感じざるを得ない。

 消費者交流事業は、2014(平成26)年度に始まり、国民に県産食品の安全性を伝えてきた。当初は生産者からの情報発信が中心だったが、近年は消費者との交流が生まれ、首都圏の飲食店が野菜を取り扱うなど成果が表れていた。消費者庁は、内容が他の観光事業などと重複しているとの理由で打ち切りを判断したとしているが、県産品の販路が十分に回復していない現状などを理解しているのか、疑問が残る。

 政府の行政事業レビューで交わされた国側の一方的な議論がよみがえる。支援の予算縮小や対象事業の制限などは、復興を停滞させる恐れがあり、県内の首長らが反発したのは当然だ。風評対策も継続性が重要で、情報発信力の低下は避けねばならない。

 福島民報社が先月実施した県内59市町村アンケートで、「風化を感じる場面が増えた」と回答したのは約65%の38市町村に上った。政府の対応などに風化を実感している自治体が多く、国の復興基本方針に抑止策を盛り込むよう求める意見が目立った。政府は、福島復興再生特措法が定める「原子力政策を推進してきた社会的責任」の重さを再認識し、関係省庁を指揮する必要がある。

 国会の姿勢も問われている。衆院は昨年秋、東日本大震災復興特別委と災害対策特別委を統合し、計75人だった委員を40人に減らした。能登半島地震をはじめ、全国で相次ぐ自然災害への対応などの課題と並行し、本県復興の審議時間を十分に確保できるかどうか、懸念を拭えない。被災地に寄り添う気持ちがあるのであれば、原子力災害という特殊性も考慮し、震災復興特別委は単独の委員会に戻すべきだ。

 通常国会の委員会審議が始まる。風化防止や復興事業の必要性を熟議し、被災地への責任をしっかりと果たしてほしい。(角田守良)