

福島県浪江町の桜の名所「請戸川リバーライン」で東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生前まで催されていた「さくら祭り」が4月4日、14年ぶりに現地で復活する。8年前の避難指示解除後も休止していたが、帰還した町民有志らが再開を願いながら並木の世話を続けてきた。夜桜花火やステージイベントなどの呼び物をよみがえらせる。関係者は咲き誇る桜の下、大勢の人が集う春の風景を取り戻し、根付かせようと意気込んでいる。
請戸川リバーラインは町中心部を流れる請戸川の堤防沿い約1・5キロを指す。春になると、約120本のソメイヨシノが咲き連なる。さくら祭りは町商工会などで構成する実行委員会が長年4月上旬や中旬に開催。よさこい演舞やお笑いライブなど多彩なステージや夜の花火が人気を呼び、春の名物行事として定着した。ただ、震災と原発事故で休止を余儀なくされた。
一帯を含む原発事故による居住制限、避難指示解除準備両区域が2017(平成29)年に解除された後も桜並木の存在は帰還した住民に癒やしを与えてきたが、祭りは住民の少なさや協賛金の不足などの事情で開かれてこなかった。
かつての実行委員会メンバーの小黒敬三さん(69)は町民有志で愛護団体を組織し、桜の手入れを続けてきた。中断中も「いつか祭りを復活させたい」との思いを抱き続けた。4年ほど前に町に戻り、並木の枝切りや防腐剤の塗布に励みながら、満開の下で町民らの笑顔が再び広がる日を夢見てきた。
避難指示の一部解除から間もなく8年となる町には福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)が立地し、JR浪江駅周辺の再整備など大事業が本格化。帰還者や移住者も少しずつ増えてきた。「今こそ祭りを再び催し、復興を推し進めたい」。小黒さんが発起人となり、祭りの復活に動き出した。移住者らも交えて1月に新しい実行委員会をつくった。
6日には町商工会館で実行委員会の会合を開き、仲間と成功を誓いながら概要を話し合った。当日は以前にならい、打ち上げ花火やステージイベントなどを盛大に繰り広げる。花火の数や出演者などの詳細を本番までに詰めていく。
小黒さんは「多くの人が集まり、町が元気になる雰囲気をつくりたい。町の復興の姿を広く発信する一日にする」と春の風物詩に育てるつもりだ。