東日本大震災・原発事故

【震災・原発事故14年】藤沼湖で交流再び 5月住民企画イベント 復興の歩み、教訓伝える 福島県須賀川市長沼

2025/02/17 10:59

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企画案を話し合う地元住民ら
企画案を話し合う地元住民ら

 福島県須賀川市長沼の住民が力を結集し、東日本大震災で決壊した藤沼湖と周辺の自然の魅力を全国に発信する。甚大な被害をもたらした藤沼湖で震災後にほぼ見送られてきた湖面のレジャー活用が、震災から14年を経て本格的に進む。「FUJINUMA GREEN DAYs(フジヌマ グリーン デイズ)」(仮称)と銘打ち、5月4、5の両日、湖に隣接している自然公園で複合イベントを催す。復興の歩みや教訓を伝えるとともに、過疎化する古里の活性化につなげる。


■キャンプやカヌー魅力発信

 深刻化する少子高齢化に危機感を募らせたのが、動き出すきっかけだった。10年前と比べ2024(令和6)年10月現在の高齢化率は15ポイント上昇して39%。人口は2千人減り、約4700人となった。2022年4月には過疎地域の指定を受けた。地元高が統合され、約40年続いた長沼まつりは途絶えた。大切にしてきた伝統などが徐々に失われていった。

 「この地域はどうなってしまうのか」。藤沼湖自然公園の管理を担う「おもふるハート」社長の深谷武雄さんらは故郷の未来のため、すぐに対策を講じなければならないとの思いを強くした。思い付いたアイデアの一つが、震災前に湖で楽しまれていたカヌー体験だった。大地震による決壊で藤沼湖周辺で7人が死亡し、1人が行方不明になった地であるため、イベントには震災を語り継ぐ役割を持たせる。湖底から見つかり、全国で株分けされた「奇跡のあじさい」を見てもらい、復興に向けた歩みや教訓を伝える。

 イベントにはボランティア団体や長沼商工会などが協力し、キャンプを軸にする。カヌーに加え、震災後に入山規制され、2023年に13年ぶりに山開きされた高土山(729メートル)の登山を繰り広げ、復興を感じることができる体験を用意する。夜間には、湖畔でのキャンプファイアや映画上映を計画している。

 一般に募った30以上のブースで食などを提供し来場者をもてなす。地元出身の芸術家や農家らが連携し、ワークショップを開く予定。自然との共生を意識し、水素燃料電池車で発電した環境に優しい電力を使用する方針で、JRグループの大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」のプレDCに合わせて企画した。

 藤沼湖自然公園は最寄りのJR須賀川駅から車で約30分かかるため、須賀川駅とJR郡山駅、会場を結ぶバスの運行も予定している。12日には、地元ボランティア遊水会をはじめとした住民が集まり、企画案を詰めた。合言葉は「過疎地を次の先進地に」。来年のDCでも企画を立て、その後も交流人口増加に向けた取り組みを継続していく。

 深谷さんは「地域が復興に向かい、過疎に負けない姿を伝える機会としたい。活性化の起爆剤になればうれしい」としている。