論説

【双葉町長発言】問われる国の責務(2月27日)

2025/02/27 09:30

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 東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌の再利用を巡り、双葉町の伊沢史朗町長は、国民の理解を得るには、まず県内で取り組むべきとの認識を示した。県外最終処分の道筋が不透明な現状への危機感が背景にあると言える。国は、苦渋の選択を強いるような対応の遅れを省み、まずは県外での再生利用の促進に一段と注力すべきだ。

 伊沢氏は記者団の取材に対し、個人的な考えであり、町内での再生利用は具体的に検討していないとも強調した。一方で、除染土壌を保管する中間貯蔵施設を受け入れた責任がある以上、県外最終処分にも責任があるとし、町長在職中に理解醸成の先鞭[せんべん]をつけたいとの真意を語った。

 中間貯蔵施設に保管されている除染土壌などは約1400万立方メートルで、東京ドーム約11個分に相当する。国は県外最終処分地を選定する上で必要な自治体、住民の理解を得るには、再生利用による減容化が不可欠として、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8千ベクレル以下と低い土壌を公共工事に使う方針を示している。

 ただ、東京都内の新宿御苑など関東圏の2カ所で計画された実証事業は、地元の反発で頓挫した。県内では3カ所で受け入れたが、断念した事例もある。国は、中間貯蔵施設の現地見学会や県外での対話集会などで理解を求めてきたとしているが、成果を上げているとは言い難い。

 環境省は今月、県外最終処分の期限である2045年3月までの工程表を明らかにした。しかし、再生利用を本格化させる時期や具体策は示していない。肝心な部分が不明確では、再生利用をはじめ県外最終処分の実現性自体に疑念も湧く。伊沢氏の発言の先に、国の対応への不満が見えてならない。国民全ての問題と改めて位置付け、国は被災自治体の複雑な思いを正面から受け止め、再生利用工程の具体化を急ぎ、国民への発信と理解獲得に総力を挙げる必要がある。関係閣僚も各自治体を訪問した際などに再生利用の必要性を積極的に訴えるべきだ。

 双葉、大熊両町が復興のために中間貯蔵施設を受け入れたからこそ、本県の環境再生が進んだ事実は重い。県内自治体も足並みをそろえ、国に責務を果たすよう強く求めてほしい。(渡部総一郎)