
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生から14年となるのを前に、武藤容治経済産業相は福島民報社のインタビューに答え、福島第1原発の廃炉作業の最難関となる熔融核燃料(デブリ)の取り出し規模拡大に向け、遠隔操作技術などの技術開発を国が前面に立って進めるとの決意を示した。(聞き手・編集局長 角田守良)
―昨年11月にデブリの試験的取り出しに成功した。規模拡大に向けた技術開発をどう主導するのか。
「デブリの取り出し工法の設計、検討や作業の具体化のため、原子炉内の調査分析をさらに進めることが重要だ。国としても、障害物を除去しながら原子炉圧力容器につながる配管を進んで容器内部を調べる遠隔装置や圧力容器内を真下から確認するためのドローンなどを活用した遠隔装置といった遠隔操作技術の開発を支援している。必要な技術開発に国も前面に立っていく」
―福島第1原発の廃炉の最終形はいまだ見通せていない。検討を始める時期に来ているのではないか。
「使用済み核燃料の長期的な健全性の評価や処理に向けた検討、取り出されるデブリの性状などの調査分析がまず必要になる。この結果を踏まえ、将来の処理・処分や保管の方法を検討し、その上でデブリの処理・処分などを含めた福島第1原発の廃炉の最終的な絵姿を地元の皆さまと意思疎通を図り、思いを受け止めながら具体化していく必要がある。責任を持ってやり遂げなければならない」
―東電による廃炉作業のトラブルが相次いでいる。
「人為的ミスに起因する複数の事案があった。東電からは、根本原因は設備の設計から現場の作業に至る各段階でのリスクアセスメントの弱さにあり、対策としてデジタル技術の活用や手順書の改善、作業従事者への教育の強化などに取り組むと報告を受けている。経産省として東電幹部を交えた定期的な会合を通じ、取り組み状況を把握し、再発防止の実効性を高めていく」
―福島県での新産業創出に向け、福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)や地元企業への支援をどのように進めるか。
「復興庁と福島県とともに福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真を夏ごろに改定する。地元企業の事業機会創出には廃炉、ロボット・ドローンなどの重点6分野に強みを持つ企業を誘致し、産業集積の効果を地元企業に波及させることが鍵だ。伴走支援として地元企業の経営力向上を図りつつ、進出企業と地元企業の取引や人材のマッチング、国内外への販路開拓などの支援を強化したい。面的なサプライチェーン(供給網)を構築しながら地域の稼ぎを創出したい。エフレイを通じ、廃炉や災害現場など過酷環境におけるロボット活用などの研究開発を進め、成果を生かしながら地元での産業化につなげる」
―帰還困難区域で避難指示が解除された特定復興再生拠点区域(復興拠点)の産業・なりわいの再生に向けた事業者支援策は。
「事業者の事業再開や新規企業の誘致が必要だ。生活環境の整備に資する革新的な取り組みの支援が有効だ。例えば、大熊町では買い物場所が少なく、人手不足という課題があり、新規企業が開発した人工知能(AI)を使った無人販売システムが導入されている。事業者の技術やアイデアを生かして日々の暮らしを改善しつつ、地域の課題解決に貢献する企業を支援する」
―昨年の行政事業レビューでは、自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金の見直し検討を指摘された。
「福島の災害は原発事故に原因があり、他の災害とは異なる。レビューの指摘を受け止めながらも、地元に寄り添っていかなければならない。国民の皆さんに福島を忘れてほしくない」