東日本大震災・原発事故

復興を問う~国との温度差~ 補助厳格化 事業見直しに苦慮 「費用対効果」重視を疑問視

2025/03/19 10:42

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与党幹部との意見交換に臨む被災自治体の首長ら=8日、大熊町
与党幹部との意見交換に臨む被災自治体の首長ら=8日、大熊町

 復興事業の補助要件や査定、費用対効果のチェックが最近、厳しくなった―。4月に東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の第2期復興・創生期間の最終年度を迎えるに当たり、被災地からそんな声が上がっている。

 新年度に向け、複数の自治体に農地の管理費を国費で補助する営農再開支援事業の見直し方針が国から伝えられた。避難区域が設定された地域の農業復興のため、除染した農地での除草や土作りなど保全管理の費用として10アール当たり上限3万5千円を補助してきた。しかし2026(令和8)年度に再び耕作する見込みがある田畑に限定するとの変更内容だった。

 福島県飯舘村は危機感を高めている。対象から外れるのは全農地2330ヘクタールの約5割に上る可能性があり、自主財源で請け負うのは困難という。村産業振興課の担当者は「基幹産業である農業を守るため、県などと連携し農地保全の必要性を訴えていく」と話す。

 農林水産省は取材に「詳細は協議中」としている。県は地元要望に寄り添いながら交渉を続ける考えだ。

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 大熊町長の吉田淳は3月に行われた与党幹部との意見交換の席上、費用対効果にこだわる国の姿勢に疑問を呈した。

 町はコメとムギの穀物乾燥施設を、原則的に国が全額負担する福島再生加速化交付金で整備しようとしている。原発事故の影響で落ち込んだ収穫量は復興とともに増加すると予想。このため、現状を上回る収量を受け入れられる施設を希望した。しかし相談した国の担当者は「施設の規模が見合わない」と難色を示したという。

 吉田は与党幹部に「(現在の体の大きさに合わせ)子どもに買った運動靴が来年には履けなくなるのと同じ。柔軟に支援してもらいたい」と求めた。

 周辺自治体は既に同様の施設を有している。町幹部は「なぜ、大熊町の復興事業が本格化する番になってハードルが上がるのか」と憤りを隠さない。

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 一方、首相の石破茂は参院予算委員会など国会答弁で福島県復興に必要な財源の確保を明言した上で、「次の5年間の全体の事業規模が今の5年間を十分に上回らなければならない」と強調している。

 しかしトップの姿勢とは裏腹に、復興事業の「使いにくさが増している」との声は被災地のみならず、全県に広がっている。復興財源の「規模」の堅持は明言するが、事業の中身について具体性に欠けていることも懸念材料だ。

 政府で長年、原発事故復興に携わる関係者は財務省の思惑を察し、こう指摘する。「財源規模は維持する一方、事業を使いづらくすれば予算の執行率が下がり続ける。将来的に事業を取りやめる口実になる」(敬称略)