
鍛え抜かれた堅守で延長十二回タイブレークの激戦を制した。22日に阪神甲子園球場で行われた第97回選抜高校野球大会(センバツ)第5日第2試合で、聖光学院(福島県伊達市)は常葉(とこは)大菊川(静岡)に4―3でサヨナラ勝ちし、最高の形で甲子園春夏通算30勝目を飾った。六回1死三塁のピンチは秋の公式戦で5失策と苦しんだ遊撃・石沢琉聖(3年)がダイビングキャッチで窮地を救った。重圧がかかる場面を想定した守備練習で技術と精神を磨き上げてきた成果を大舞台で発揮し、息詰まる投手戦の勝利をたぐり寄せた。
六回1死三塁、相手の先制点を防ぎたい聖光学院の内野陣は前進守備を敷いた。中堅に抜けそうな二遊間の鋭い打球に遊撃の石沢が飛び付いた。ボールはグラブに収まり、一塁に送ってアウトに。三走の生還を許さなかった。固唾(かたず)をのんでプレーを見守っていた聖光学院のスタンドは一気に沸いた。石沢は「斎藤(智也)監督やコーチから熱心な指導を受けて、何とか応えたかった」と汗を拭った。先発の大嶋哲平(3年)は無四球でテンポ良く投げ込み、試合のリズムをつくった。
延長十二回には鮮やかな併殺プレーで無得点に封じ、ベンチが活気づいた。その裏のサヨナラ劇の呼び水となった。
石沢は昨年10月に右手中指を骨折していた影響もあり、秋の公式戦10試合で5失策を記録。けがが癒えた冬場は「足を引っ張ってしまった」と奮起した。体全体を使うスローイングの基本動作を反復し、正確な送球を体に染み込ませた。
チームの守備練習では、ミスに対して周囲が原因を指摘し合い、張り詰めた緊張感の中で一丸となって伝統の堅守に磨きをかけた。昨年秋の明治神宮野球大会で東洋大姫路(兵庫)に0―10で大敗した悔しさを原動力に、妥協することなくチーム力を高めた。
2回戦は左の好投手を擁する早実(東京)と対戦する。石沢は「引いたら負けると思うので、(守備の時は)絶対に打球を止めてやろうという気持ちでやっていきたい」と闘志をたぎらせた。