論説

【城南信金の新事業】県内企業も取り込んで(3月27日)

2025/03/27 09:22

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 中小企業を取り巻く環境が厳しさを増す中、城南信用金庫(本店・東京都)は取引先の製造業者約200社を束ね、事業の共同受注を目指す連携事業を近く開始する。各社の持つ多様な技術を組み合わせ、高度化を図って大手などにアピールする。それぞれの「知恵」を持ち寄り、経営の活路を見いだす活動は意義がある。本県の信金とこれまでに培った絆を生かし、県境をまたいだ取り組みに成長させ、県内事業所の基盤強化にもつなげてほしい。

 林稔理事長は「中小企業が自社だけでできることには、限りがある」と、新事業を始めた背景を説明する。取引先の優れた技術を結集し、大手に引けを取らない受注の橋頭堡[きょうとうほ]を創出する狙いがある。数千社規模の参加も視野に入れている。

 各社の生産体制、製品情報などを含めたデータベースをまずは構築する。参加企業が持つものづくりの技を幅広く組み合わせ、大手・中堅側からの難度の高い発注にも対応可能である点を訴え、業務の獲得につなげていく。物価高が続く中、資材の共同調達、新規事業の創出も長期的な目標に掲げている。

 受注する際の参加者間の役割分担は、専門知識を持つ城南信金の「ものづくりコンシェルジュ」が担う。大手電機メーカーで研究開発に携わった元社員ら7人が登録しており、案件に応じて加わる企業を選別する。技術者ならではの「目利き」は、挑戦を成功に導く大きな原動力となるはずだ。

 城南信金と県内の信金は、東日本大震災発生後に始まった被災地の経済再生に向け商談会「〝よい仕事おこし〟フェア」の開催や、会津坂下町での復興支援の日本酒造りを通じて交流を深めてきた。長年培った同業の連携の輪を生かし、今回の事業に県内企業が参加する流れを生み出してはどうか。東京都内の優れたものづくり企業とのつながりは、本県側の技術を深化させる契機になる。

 「金利のある世界」の復活やネット銀行の浸透で預金の流動化が激しくなり、既存の金融機関は大きな変革期を迎えている。柔軟な発想でいかに取引先の支援を進めていくのかも、将来の経営基盤の安定に向けた大きな分岐点であろう。(菅野龍太)