会津若松市の野口英世青春通りにある商業ビル「会津ロイヤルプラザ」が解体された。高い建物が姿を消し、更地になったことで視界が開け、歴史的な建物が連なる通りの風情がより鮮明になった。埼玉県川越市のように、レトロな町並みには観光客を呼び込む力がある。「景観」と「町並み」を切り口としたまちづくりを改めて考える契機となるよう願う。
ロイヤルプラザは4階建ての近代的な建物で、ボウリング場やカラオケ店などが入居していた。一方で、通りには19世紀後半から20世紀前半に栄えた大商人の威勢や財力を今に伝える、蔵造りの「福西本店」がある。黄熱病や梅毒の研究で知られる世界的な医学者野口英世が医学の基礎を学んだ会陽医院は、カフェ「會津壱番館」として改修され、往時をしのばせる。他にも明治から大正時代にかけて建てられた建築物が数多く残る。
こうした歴史と文化が息づく町並みになったのも、「野口英世青春通り町並み協定」の存在が大きい。協定では店舗などの新築、増築、改築、外観の大規模な模様替え、色彩の変更に当たり、配慮すべき事項が定められている。例えば、建築物の形態は大正ロマンを基調としたイメージとし、色彩については歴史性を損なわない落ち着いた色調とすることなどが盛り込まれている。柔らかな約束事ではあるが、ロイヤルプラザの跡地利用に当たっては、協定を尊重し、まちづくりと連動した形での開発を期待したい。
行政の後押しも欠かせない。会津若松市の歴史的風致維持向上計画が一昨年、歴史まちづくり法に基づく国の認定を受けた。歴史的建造物と、そこで営まれる生活を一体として保存するのが狙いで、認定されると、歴史的価値の高い建造物を再生したり、趣のある町並みに景観を整備したりする際、市や民間所有者は国の優位な財政支援を受けられる。れんが舗装の改良などを通して、町並みの魅力に磨きをかけるべきだ。
市内には、歴史的な建物を生かしたまちづくりで、年間45万人が訪れる観光スポットに生まれ変わった七日町通りの好事例がある。野口英世青春通りは七日町通りに隣接する。互いに連携し、観光誘客によるまちの活性化をけん引してほしい。(紺野正人)