「転がる石には苔[こけ]が生えぬ」。洋の東西を問わず伝わることわざだ。県北地方の40代の高校教師は、世代によって理解が分かれるのではないかと指摘する▼自らは「仕事を変える人は成功しない」と教わった記憶がある。最近の教え子の多くは「常に動いている者は成功する」と解釈しているという。どちらが正解か。例えば、ロック界の世界遺産とも評される英国のローリング・ストーンズ。直訳すれば「転がる石たち」となる。60年を超える精力的な活動を踏まえれば、高校生世代が正しいのだろう▼東京の不動産会社が20~30代の転職事情を調べた。6割超が1回以上、職場を変わっていた。1カ所で勤務する時期を「定年まで」としたのは、1割程度にとどまった。こうした傾向は年々強まっているとも聞く。若者には「石の上にも3年」は、もはや死語のようだ。先輩の厳しい指導に耐え、時にはぐっと涙をこらえた時代よさらばか▼輝くダイヤの原石たちよ。苔を生やさず、社会を疾走する姿は実にういういしい。未来に向けて、ストーンズの名曲を贈る。♪いつもほしいものが手に入るとは限らない―。胸の隅に小さく、忍耐の2文字を刻むのも忘れずに。<2025・4・22>