論説

【消費税減税】有効な代替財源示せ(4月29日)

2025/04/29 09:12

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 長引く物価高を背景に、野党が消費税減税を打ち出した。今夏の参院選の争点に浮上する見通しが強まっている。国民生活の根幹とも言える社会保障の財源に関わる議論は何より、不足分をいかに補うか有効な代替案がなければ成り立たない。各党は有権者に、税と福祉の詳細な将来像を示してほしい。政治の責任が問われる。

 立憲民主党は1年間に限って、食料品の消費税率を0%に引き下げる案を参院選の公約に盛り込む方針だ。日本維新の会、国民民主党、共産党の主張も、内容は異なるものの税率を減らす方向が共通している。与党・公明党は減税の選択肢に、飲食料品の軽減税率を据えていると伝わる。自民党参院にも消費税引き下げ論が強まっている。

 コメをはじめとした食料品の物価高騰は家計を圧迫し、「トランプ関税」により世界経済は不透明感を増している。逆進性の強い消費税の性質を踏まえれば、中・低所得者層の家計支援に向けて対策を講じる必要性は十分理解できる。ただ、その実現は、減税を主張する各党が今後示す代替財源論の中身次第と言ってよかろう。

 消費税の税収は法律により、年金、医療、介護、子育て支援などに充当される。2024(令和6)年度は、国と地方を合わせた関連費用は47兆円だったが、消費税収との差額は19兆8千億円に上り、全体をカバーし切れていないのが実情だ。食料品の税率を撤廃した場合、5兆円の減収になるとの見通しが出ており、実施された場合の影響は極めて大きい。

 林芳正官房長官は記者会見で「税率引き下げは適当でない」と発言した。党内の減税論に自民党執行部は否定的な見方を示している。政府はトランプ関税を受けた「緊急対応パッケージ」に、ガソリン価格の引き下げや電気・ガス料金の支援を盛り込んだ。こうした対策とも絡めて、消費税の在り方を総合的に論じる視点が欠かせない。

 共同通信社の世論調査で、物価高対策での現金給付の賛否を尋ねたところ、反対は55・3%に上り、賛成の37・5%を上回った。国民が健全な国家財政の確立を求めている証しとも言え、税を巡る制度変更は極めて慎重に検討されるべきだ。(菅野龍太)