東京電力は23日、福島第1原発2号機からの溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しを完了した。昨年に続き2回目で、トラブルが相次いだ前回と異なり、工程は順調に進んだ。次回は広範囲での採取が可能となるロボットアームを投入する予定で、作業は新たな段階に入る。採取量も徐々に増やしていく方針で、これまで以上に入念な準備と安全性の向上が求められる。
今回は1回目と同じく、パイプ型装置を原子炉格納容器に挿入した。先端に付いた爪形の機器を使い、前回の採取場所より1~2メートル中心部で、真上に原子炉圧力容器がある地点のデブリをつかんだ。回収したのは大きさ4~5ミリ程度、重さ約0・2グラムと前回より小粒だったが、溶け落ちた燃料の状況や堆積の具合などが場所によってどのように違うのかを把握する上で貴重な試料になる。
昨年の初回採取時は、着手直前の8月にパイプの接続ミスが判明した。その後もカメラの不具合などトラブルが続き、作業完了は11月となった。これらの失敗例を踏まえ、今回は事前に作業員約60人が模擬訓練で習熟度を高め、今月15日の着手から9日間で終了させた。長期化する廃炉作業では、作業員の被ばく線量を抑える取り組みが欠かせない。引き続き、作業の効率化と訓練を徹底し、工期の短縮に努めてほしい。
ロボットアームは長さ22メートルの折りたたみ式で、上下左右へ自由に伸縮できる。直線的な動きのパイプ型装置では届かなかった地点からのデブリ採取が可能になる。障害物の切断やレーザーによる距離測定の装置も備え、映像撮影などの調査も拡充される。ただ、高線量下での作業実績がないだけに、思い描いたように動いてくれるのか、不確定な要素も抱えている。
東電は、3回目の取り出しが今年度後半になるとの見通しを示している。それまでの間に、ロボットアームの点検と試験を積み重ね、機器の安定性と技術の精度を十分に高める必要がある。
一方、2回にわたる採取に使用したパイプ型装置は原子炉格納容器から撤去後、原発敷地内に保管されるという。作業の進捗[しんちょく]とともに増え続けていく放射性廃棄物の対策にもしっかり向き合わなくてはならない。(角田守良)