論説

【拘禁刑6月施行】社会全体で更生支援を(5月19日)

2025/05/19 09:18

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 懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」が6月1日に施行される。刑務作業が一律に義務付けられなくなり、受刑者の特性に応じた作業や指導を組み合わせた更生プログラムが導入される。懲罰から改善更生に軸足を移し、受刑者の再犯防止と円滑な社会復帰を目指すのが狙いだ。目的を達成するためには刑務所内の改革だけにとどまらず、出所後に再出発を後押しする体制強化と、社会全体の受け入れ意識の醸成が必要になる。

 法改正の背景には再犯者率の高さがある。法務省の「犯罪白書」によると、全国で2023(令和5)年に刑法犯で検挙された18万3269人のうち、再犯者は8万6099人で再犯者率は47%に上った。県内の検挙者2046人のうち、再犯者は941人、再犯者率は46%だった。受刑者の更生に重きを置く拘禁刑の導入は、検挙者のおよそ半数が再び法を犯している現実に沿った対応と言える。

 福島刑務所では5月1日現在、受刑者736人のうち高齢者(65歳以上)が161人で21・9%を占めている。出所後の福祉施設への適応や日常生活の自立支援も必要になる。同刑務所は昨年1月、「高齢福祉課程」を導入し、こうした課題に対応する支援メニューを実践している。高齢受刑者は増加傾向にあり、それぞれの健康状態に合わせた柔軟な対応が必要になる。刑務の現場の負担が増すのは必至とみられ、人的体制の強化も検討されるべきではないか。

 出所した高齢者や障害者の社会復帰を支えている県地域生活定着支援センターからは、「職員の数が追い付いていない」との声が上がっている。出所者の就職の受け皿となる「協力雇用主」は県内に533社あるが、2023年度に実際に雇用したのは9社にとどまっており、法改正の趣旨を丁寧に説明しながら採用に理解を求める取り組みの強化も急がれる。

 ノルウェーでは、社会生活に近い環境で更生を目指す開放型刑務所制度を採用し、出所後の住居確保や就労支援、心のケアの包括的な体制を整えた。その結果、再犯率は約20%未満(3年以内)で、日本の半分以下となった。他国の例を参考に刑務所改革にとどまらず、出所後も切れ目のない総合的な支援体制の確立が求められる。(渡部純)