社会的に孤立し、自宅で誰にもみとられずに亡くなったとみられる「孤立死」が昨年、全国で2万1856人に上った。警察庁のデータを基に内閣府が初めて推計結果を発表した。高齢化と核家族化に伴う単身世帯の拡大で、今後、孤立死が急速に増加することが懸念される。官民の力を結集し、地域全体で見守りを強化すべきだ。
全国の警察が昨年、取り扱った遺体のうち自宅で死亡した1人暮らしの人は7万6020人で、本県は937人だった。このうち死後8日以上経過して発見されたケースを内閣府は孤立死と定義している。年齢別では60歳以上、性別では男性がそれぞれ8割を占めた。都道府県別の人数は明らかにしていないが、都市化が進めば本県でもさらに数が増えると予想され、対策は急務だ。誰の支えもなく迎える死は痛ましく、遺体の放置は人間の尊厳を損なう。
孤独・孤立対策に一元的に対応するため、県は市町村や社会福祉協議会、NPOなどと「官民連携プラットフォーム」を今年1月に立ち上げた。各市町村が中心となり、独居高齢者や生活困窮者、ひきこもりの人らへの支援を強化するとしているが、民生・児童委員の高齢化が進む中、見守りの担い手確保が課題となっている。市町村は宅配業者や電力会社、ガス会社など戸別訪問の機会がある事業者と協定を結び、営業活動中に住民の安否確認と緊急時の通報を担ってもらってはどうか。猪苗代町は電気使用量を基に1人暮らしの高齢者の健康状態を見守る取り組みを7月にも始めるが、モデルケースの一つになるだろう。
本県の場合、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による避難者には特に目を配る必要がある。子どもや孫の世代と離れて暮らす避難者の高齢化・単身化が孤立死のリスクを高める。県社会福祉協議会はいわき、郡山、南相馬、福島の4市に設けた「社協連携避難者支援センター」を拠点に、避難先と避難元の社会福祉協議会職員が一緒に避難者を訪問している。避難者特有の悩みに寄り添い、効果的な生活の後押しを実現してほしい。
孤立死は誰にとっても人ごとではない。行政任せにせず、隣人に心を配る地域の一体感を強めたい。(斎藤靖)