環境省は、スマートフォンやモバイルバッテリーなどに使われる充電式のリチウムイオン電池の分別回収を徹底するよう全国の自治体に通知した。家庭ごみと一緒に捨てられ、ごみ処理施設や収集運搬車で出火や発煙につながる事故が相次いでいるためだ。県内でも回収のルールづくりを急ぎたい。
リチウムイオン電池は強い圧力や衝撃が加わると、発熱、発火する恐れがある。環境省によると、2023(令和5)年度にごみ処理施設やごみ収集車などで起きたリチウムイオン電池が原因とみられる火災は8543件と前年度の約2倍に増え、過去最多となった。県内でも419件に上る。処理を担う作業員が危険にさらされるほか、火災で施設の稼働が停止すれば市民生活に影響が及ぶ。回収の徹底は喫緊の課題と言える。
福島民報社が県内の市町村の担当者から聞き取った5月1日時点の回収状況では、59市町村のうち34市町村が「回収していない」と回答した。不燃ごみとして処理したり、家電量販店などへの持ち込みを求めたりと、回収までは至っていない実態が浮き彫りになった。
福島市は今年3月から、市内の公共施設と商業施設計40カ所に設置している小型家電回収ボックスで、リチウムイオン、ニッカド、ニッケル水素の電池が使われている製品と電池本体の回収を始めた。ボックスに入らなかったり、変形・膨張したりしたものは市役所本庁舎の担当課窓口と市内2カ所のクリーンセンターで集めている。一つの事例として参考にしてほしい。
回収した電池は処理業者に引き渡す必要があるが、リサイクルマークが記された電池しか引き取らないケースもある。福島市の場合、隣県に適当な業者がなく、北海道の業者に引き取ってもらうことにしている。ただ、年間500~600万円の運搬・処理費用が見込まれる。市町村の負担を軽減するためにも、国はリサイクルの仕組みを早急に構築すべきだ。
県内では、リチウムイオン電池からレアメタル(希少金属)を回収する技術を確立し、事業化させる取り組みが民間企業で進められている。リサイクルの推進だけでなく、産業育成の観点からも実現に期待する。(紺野正人)