論説

【ワーケーション】拡大へ会津は連携を(5月30日)

2025/05/30 09:17

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 休暇を楽しみながら仕事をこなすワーケーションの受け入れが、会津地方で伸び悩んでいる。会津若松市では推進協議会が2022(令和4)年に設立され、普及に努めてきた。魅力的な観光スポットが数多くある会津地方では、受け入れを広げる余地がある。地域の活性化に向け、市町村と民間団体が連携して誘致に取り組んでほしい。

 協議会はワーケーションで訪れた企業人に、市のスマートシティ事業や再生可能エネルギーに関する研修プログラムを設けている。会津若松市は市内の宿泊施設に2泊以上し、協議会の研修プログラムに市外から参加した場合にレンタカーや貸し切りバス、タクシー利用料の一部を助成している。市内のオフィスビル「スマートシティAiCT(アイクト)」に入居する正会員とサポート会員計92社に利用を呼びかけている。関連の従業員数は35万人に上るが、昨年度の研修プログラム参加者は目標の200人に対して79人と4割にとどまった。協議会事務局の市観光課は今年度、勧誘の強化に向けて首都圏の企業への訪問回数を増やすという。

 ワーケーションはUIターンや二地域居住、移住・定住へのステップと言える。宿泊施設での仕事や滞在先の観光体験を超えて、「住んでみたい」と思わせる努力も必要になる。先進地の和歌山県では、公私にわたる付き合いを深め、滞在先を手配するなど、きめ細かい支援を続け、移住につなげている。会津地方全体で推進協議会を設けるとともに、市町村単独で採用が難しい専任のコーディネーターを配置するのも一案だ。

 会津若松市をはじめ、蔵とラーメンのまち喜多方市や大内宿のある下郷町、インバウンド(訪日客)に人気の只見線沿線の町村などが連携して広域的な研修プログラムをつくれば、内容は充実する。複数の自治体を巡れば滞在日数が長くなり、地域経済への波及効果も大きい。

 会津地方全体の進出企業や、観光のリピーターにもワーケーションを促してもらいたい。人口減が進み、経済が縮小傾向にある中、新規の地域産業に発展する可能性もある。新たな働き方の定着に向けて、市町村や関係団体が息の長い取り組みをしていくよう期待したい。(風間洋)