東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の処分について、佐賀県の山口祥義知事は、国の対応次第では受け入れを検討する考えを示した。再生利用と県外最終処分の具体的な進展が見られない中、本県と同様に長年、原子力政策の一端を担ってきた県の知事が、全国的な議論の広がりに向けて口火を切った形だ。国は、賛否の判断を迫られる首長らの意見や提案を積極的に吸い上げ、問題解決の糸口を探るべきだ。
山口氏は18日の県議会一般質問で、除染土に対する所見を問われ、「国の責任において、国全体で負担するような取り組みを進めることになれば、県としても(受け入れを)検討しようと考えている」と答弁した。その後の取材では、「福島にずっと集中しておくわけにはいかない」とした上で、「国は、福島以外のみんなで分かち合うような仕掛けを作ったほうが良い」と述べ、国に積極的な関与を求めた。
これらの発言からは、国策としての原子力発電を支えてきた原発立地地域の問題には、国全体でしっかり向き合うべきだとの強い思いがうかがえる。佐賀県には九州電力玄海原発があり、過酷事故に見舞われた本県の現状は人ごとではないはずだ。
今年2月、双葉町の伊沢史朗町長は除染土に対する国民の理解を得るために、まずは県内で再生利用を進めるべきだとの認識を示し、注目を集めた。山口氏は被災地が再び苦渋の選択を強いられつつある状況に警鐘を鳴らしたとも言える。
全国で負担を分かち合うとなれば、大量の電気を消費してきた大都市部の理解と協力も欠かせない。ただ、東京都や埼玉県などで計画された再生利用の実証事業は住民の反発で頓挫している。電源地域と消費地が足並みをそろえて取り組む必要があり、国の指導力が問われる。
政府は先月、県外最終処分の実現に向けた再生利用推進の基本方針を決めた。首相官邸や各府省庁、地方出先機関で除染土活用を検討するとしたが、他に具体策は提示されず、国民の理解をどのように醸成していくのかは依然として大きな課題だ。まずは全国の首長らに現状を正しく理解してもらい、除染土への関心を高めたい。(角田守良)