論説

【相双の製造業連携】地域産業の牽引役に(6月30日)

2025/06/30 09:07

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 相双地方を中心とした金属加工や部品製造、組み立て、設計などの中小企業が、共同受注を目指す「相双テクノネットワーク」を結成した。それぞれが磨いてきた技術力を集結し、多様なものづくりに対応する体制を整え、被災地の産業を牽引[けんいん]するよう望む。

 製造分野では、単一の部品ではなく複数が組み合わさった単位で設計から加工、組み立てまで一貫して発注するケースが増えている。特定の領域を得意とする中小企業は、単独で要求に応えられない場合が多いため、福島相双復興推進機構(官民合同チーム)の支援を受け、昨年8月から組織化を目指してきた。

 今年4月に発足したネットワークには15社が参加している。設計や組み立て、検査などを担える4社がコーディネーター企業となって、案件ごとに幹事企業を選んでチームをつくる。複数の事業所が関わることで、少数の試作品開発から量産化まで幅広い注文に応じる態勢が整った。今後は、参加企業が互いの強みや特性を理解し、受注可能な分野を発信していく必要がある。ホームページの活用や見本市などへの積極的な出展で、独自の取り組みをアピールしてほしい。

 相双地方にはすでにロボットやドローン、航空宇宙分野に関わる企業・団体などでつくる南相馬ロボット産業協議会が結成され、技術力の向上や新事業の創出に取り組んできた。こうした組織との連携は欠かせない。つながりを広げて受注の機会を増やし、実績を積み重ねれば、ネットワークの強みがより大きくなるだろう。

 福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想によって進出する新興企業の操業を後押しする役割も期待される。ものづくりで長年、経験を重ねた地元企業が、新しいアイデアを具現化し、実用化を担えれば、産業の集積と定着化が一層進む。

 浪江町の福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)とも密接に連携を図るべきだ。研究開発から製品化までの過程で、相双地方の技術力をどう生かせるか、ネットワークが積極的に方向性を示すことはできないか。両者の共同作業が社会実装化された際に、地元で支える態勢づくりが行政や経済団体には求められる。(平田団)