第27回参院選が公示された。政権交代を伴わない参院選は時の政権の「中間評価」の意味合いを持つとされてきたが、今回は様相が異なる。衆院で少数の自民、公明両党が参院でも過半数を割り込めば、国会運営がおぼつかなくなり、ひいては政権の枠組み再編につながりかねない。今後の政局を左右する重要な選挙だけに、有権者は棄権することなく、選挙区と比例代表の票を投じてほしい。
参院は非改選を含めた定数が248で、今回の参院選では改選124(選挙区74、比例代表50)と、東京選挙区の非改選欠員1補充の計125議席を巡って争われる。自民、公明両党が50議席を獲得すれば、非改選を含め過半数125を維持できる。野党の非改選は野党系無所属議員を含めて48で、過半数には77議席が必要となる。比例票の獲得に加え、福島県を含む「1人区」の勝敗が攻防の鍵を握る。
物価高対策では、与党が給付を掲げ、野党は消費税の減税や廃止を訴えている。賃上げが物価上昇に追い付いていない中、有権者の関心が集まるのは当然だが、想定以上に進む少子化や年金などの社会保障、コメの価格高騰に端を発した食料安全保障など多くの課題が横たわる。米国との関税交渉にも閉塞[へいそく]感が漂っており、まさに内憂外患の状態にあると言える。各党、候補者は、こうした課題にどう向き合うのか、積極的な政策論争を望みたい。
選挙後の政権の枠組みも気になるところだ。共同通信社が実施した直近の全国電話世論調査では、与党が「過半数割れした方がいい」との回答が50・2%に上り、「過半数割れしない方がいい」は38・1%にとどまった。参院選後の最も望ましい政権の枠組みは「自公政権に一部の野党が加わった政権」が30・7%、「政界再編による新たな枠組みの政権」30・1%、「現在の自公政権」17・1%、「野党による政権」16・0%だった。外交・安全保障を含め、どの政党に国のかじ取りを委ねるべきなのか。選挙後の政権運営をも見据えた選択が求められる。
先の東京都議選で保守系の新興政党が初議席を獲得するなど、最近は各種選挙で新勢力が支持を集めるケースが目立つ。既成政党の真価も問われる。(紺野正人)