トランプ米大統領は、日本の製品に25%の関税をかけると明らかにした。4月発表当初の24%を上回る税率で、到底、容認できるものではない。米国は県産品の最大の輸出先であり、県内には自動車関連の部品製造を担う事業所も多い。政府には、影響を最小限にとどめるよう最後まで粘り強い交渉を望む。
トランプ米大統領が石破茂首相に宛てた関税書簡では、8月1日から、米国が輸入するあらゆる日本製品に25%の関税を課す。一方で、日本が米国に市場を開放したり、非関税障壁を撤廃したりすれば、関税率を変更する可能性があるとしている。新たな関税率を示すことで圧力をかけ、譲歩を引き出すのが狙いとみられる。石破首相は「極めて遺憾」と述べ、関係閣僚に協議継続を指示したが、これまでの交渉は何だったのか。何が障壁となって合意に至っていないのか。交渉事とはいえ、政府はこれまでの経緯を国民に説明すべきだ。
仮に交渉が決裂し、輸出が滞る事態となれば、自動車関連を中心とする国内の産業や雇用に広く影響が及ぶ。県によると、自動車関連の部品製造に携わっている県内の事業所は300社超に上る。日本酒や農畜産物など県産品の米国への輸出額は2023(令和5)年度は4億2794万円で、輸出総額13億3900万円の3割超を占め、最大の輸出先となっている。政府は想定されるあらゆる影響を精査し、最悪の事態に備えなければならない。
賃上げの流れにも冷や水を浴びせかねない。連合傘下労働組合の今春闘での賃上げ要求に対する企業側回答は、平均月額1万6356円、賃上げ率5・25%(対前年比0・15ポイント増)で、33年ぶりに5%の大台に乗った昨年を上回った。連合福島も平均月額1万4076円、賃上げ率4・94%(対前年比0・11ポイント増)で、比較可能な2018(平成30)年以降で最高の引き上げ水準となった。特に県内では中小企業への波及が鮮明になっており、トランプ関税の影響次第では、腰折れさせる恐れがある。
依然、賃上げが物価上昇に追い付いていない状況が続いている。関税交渉の行方を見据えつつ、経済の好循環を実現させる具体策を講じる必要がある。(紺野正人)