論説

【東電の廃炉工程】廃棄物処分の展望示せ(8月8日)

2025/08/08 09:03

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 東京電力は福島第1原発3号機からの溶融核燃料(デブリ)の本格的な取り出しについて、2030年代初頭としていた着手時期が2037年以降にずれ込むと発表した。具体的な工法を検討した結果、準備段階の作業が想定以上に困難で、長期化すると判断した。多くの課題が指摘される中で、特に気がかりなのは各工程で発生する放射性廃棄物の保管と処分の見通しだ。廃炉の行方を左右しかねないだけに、東電は中長期的な展望を示す必要がある。

 デブリの本格採取に向け、東電は原子炉格納容器の上部と側面に装置を新設する工法を検討している。装置を置く構台を建設するほか、放射線量が極めて高い建屋内の機材撤去、除染などの準備に12~15年かかると見積もった。併せて、原子炉建屋に隣接する廃棄物処理建屋を解体する。

 今後、デブリが残る1、2号機でも同じような作業に着手するとみられる。これらの取り組みによって、大量の放射性廃棄物が発生するのは確実で、安全性と十分な容量を備えた保管施設の増設は不可欠だ。原子炉から取り出したデブリの処分方法も決まっていない。保管場所が確保できないのを理由に本格的な取り出しが再び先送りされる事態は避けたい。

 廃炉完了までには、原子炉建屋の取り壊しや汚染土壌の回収なども待ち構える。置き場は原発構内だけで間に合うとは限らない。最終処分についての議論も求められる。

 そもそも、どのような状況をもって廃炉を遂げたとするのかもあいまいだ。東電と政府は地元と話し合い、敷地内の将来像を描く時期を迎えているのではないか。その議論と廃棄物処分の在り方は切り離せない。

 東電はデブリ取り出しの本格化がずれ込んでも、工程表「中長期ロードマップ」に明記した2051年までの廃炉完了の目標は変わらないとの姿勢を貫いている。目標達成が難しい状況にあるのは十分に理解しつつ、可能性がある限り、挑戦を続けるのは当然の対応だろう。

 依然として、原発事故が収束したとは言い切れない状況にある。被災地の復興に早期廃炉は欠かせない。東電は目標を高く掲げ、数々の難題克服へ最大限の努力を尽くすべきだ。(角田守良)