ライバルがひしめく業界は、商品の広報にひときわ知恵を絞っているに違いない。アルコール飲料のテレビＣＭは百花繚乱［りょうらん］。売れっ子タレントの飲みっぷりに、こちらも喉が鳴る▼某メーカーの看板ビールを売り込む「大人エレベーター」シリーズは１５年前から続く。各界の著名人が大人の定義や価値観を語る。聞き手の俳優・妻夫木聡さんが、架空の建物に相手を訪ねる。行き先を告げる階数は対談相手の年齢だ。現在、結成２５周年を迎えるバンド「サンボマスター」の山口隆さん（会津若松市出身）が登場し、音楽や運命を論じている▼映画監督・北野武さんは、６４歳で出演した。大人になったと感じる瞬間を「若いときの嫌なことを全部思い出し、恥ずかしくなるとき」。「（夢とは）あそこに行きたいという星みたいなもの」と表現したのは、当時６６歳の作詞家・松本隆さん。深みのある言葉の数々に、それぞれが乗り越えた苦悩や挫折が垣間見える▼残暑どころか日々、盛夏。いやしの一杯に染みるほろ苦さは、山あり谷ありの人生行路と重なる。ぶつかる時があっても、容易に周囲には流されず。「丸くなるな、星になれ」と自らに言い聞かせてみる。＜２０２５・８・２９＞
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