論説

【安積高140周年】開拓者精神実践に期待(9月1日)

2025/09/01 09:30

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 今春、中学校を併設した安積高の創立140周年記念式典が8月30日、郡山市のけんしん郡山文化センターで盛大に挙行された。県内屈指の伝統校が中高一貫校という歴史を積み上げ、新たな一歩を踏み出している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で甚大な被害を受けた福島県にとって教育こそ希望の光だ。校訓とも言うべき「安積の精神」の下、「開拓者精神」を実践してきた伝統校のけん引力に期待したい。

 安積高は1884(明治17)年に福島中学として現在の福島市に誕生した。5年後に安積郡桑野村(現在地)に移転し、最初の卒業式が行われる。授業を始めた9月11日を創立記念日としており、昨年が140周年だった。しかし、県立として3番目となる県立安積中学の開校が今年4月に迫っていたため、あえて記念式典を約1年遅らせた。式典では親子3代から、高祖父までの5代にわたる在籍者を顕彰するなど歴史と伝統を改めて内外に示した。一方で、高校生とともに目を輝かせ誇らしげに並ぶ60人の中学第1期生が、未来への希望を予感させた。

 新たに併設された中学は「未来を描き、未来を創る開拓者」をスローガンに掲げている。「次代を担い、人類に貢献できる、志高く有為な人材を育成する」を教育目標とする。そのために単に大学受験にむけた先取り学習ではなく、主体的な学びを育む「深掘り学習」に力を入れる。一方、高校は既に昨年度からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の第3期指定を受けた他、令和4年度からは進学に重点を置く「全日制課程単位制普通科」となり、医学部コース制を導入するなど、新たなプログラムを次々と取り入れている。全国の進学校に引けを取らない態勢を整えつつある。

 未来を担う子供の教育環境の充実は重要だ。特に高校教育は全国と直接比較されやすい。少子化で県内の高校は統廃合され、それぞれの役割や設立目的の明確化が求められている。「県立安積中・高」の持つ役割は明らかだ。全国に伍[ご]する教育力や全国平均を下回る県全体の学力向上をけん引する旗印になることだ。伝統の紫の旗を掲げ、福島県の教育の未来を切り開くことを望む。(関根英樹)