会津若松市は会津藩などを通じてゆかりのある県外11市町と災害時相互支援の協定を締結した。いずれかの市町で災害が発生した際に、他の自治体が物資などを供給する。北海道から四国までをカバーする広域的なネットワークが整った。災害の規模が大きくなるほど遠方からの支援は有効で、迅速な復旧態勢を構築できる利点がある。平時からの交流を緊急時の協力につなげる取り組みに注目したい。
協定は会津若松市をはじめ北海道の稚内市、余市町、利尻町、利尻富士町、青森県のむつ市と三戸町、山形県米沢市、神奈川県横須賀市、長野県伊那市、滋賀県日野町、徳島県鳴門市間で結んだ。近年は豪雨被害が相次ぎ、南海トラフ地震発生の可能性が指摘されていることを踏まえ、県境をまたぐ自治体と協定を交わすのは有効だと判断した。
会津若松市に事務局を置き、万が一の際には被災市町の被害状況や必要な支援を確認し、他の首長に対応を求める。会津若松市が被災した場合はむつ市か横須賀市が事務局を担う。食料や飲料など生活必需品の提供、被災者救援と施設復旧に必要な職員の派遣などを想定している。さらに効力を発揮させるには、担当職員による合同研修会の開催も求められるだろう。
一方、両沼地方町村会は佐川急便南東北支店と災害時備蓄物資の管理に関する協定を締結した。佐川急便が複数の自治体と同様の協定を結ぶのは初めて。共同で所有する食料などを会津美里町にある倉庫で管理する。災害発生時には同社が被災者に物資を届ける。職員数が限られている町村会加盟の7町村にとって、業務負担や備蓄物資の維持・管理の経費削減が図られる有意義な取り組みと言える。
昨今の異常気象を考えれば、今後はこうした自治体間や民間企業との連携をさらに広げていくことが重要となる。災害の種類や被害規模に応じて柔軟かつ迅速に支援体制を整えるには、日頃から提供できる物資や人員に関する情報を共有する取り組みが欠かせない。東日本大震災時は交流のある県外の自治体からの応援が心強かった。県内の他市町村も会津若松市の事例を参考に、新たな支援先との協定で、災害への備えを強固にするよう前向きに検討してはどうか。(風間洋)