福島県内122病院8割が赤字 経費高騰分、診療報酬でまかなえず

2025/09/07 11:15

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 福島県内122病院(病床数20以上)のうち、約8割に当たる95病院が直近の決算で赤字となった。病院や運営法人への聞き取り、県への情報開示請求で判明した。医薬品や医療機器、人件費、光熱費などの経費高騰分を、収入に当たる診療報酬で賄えず、経営危機に直面している。全国知事会などは診療報酬の引き上げを国に求めているが、次の改定は2026(令和8)年度。病院関係者は「このままでは経営破綻の恐れがある。地域医療体制の維持が困難になる」と窮状を訴える。


■「地域医療維持困難に」

 東京電力福島第1原発事故の影響などで閉鎖・休院している5病院を除く、県内122病院の2024年度決算を調査した。決算非公開や回答拒否が5病院あった。地域医療の中核を担う大規模病院の赤字幅が大きく、県中地方のある病院の赤字額は25億円以上の規模に膨らんだ。救命救急医療や災害対応、感染症指定などの大規模病院ほど、赤字額が増大傾向にある。24時間体制で医療スタッフを配置し設備維持費がかさみ、資材高騰の影響を受けやすいためだ。

 多くの病院は新型コロナウイルス流行時に国から多額の補助金が投入され一時的に収入が増加した。ただ、コロナ禍後の県内医療機関の受診率はコロナ禍前と比較して70~75%程度に低下した。県は経営悪化の一因とみている。

 医療人材が不足する中で医師や看護師らの人件費を削れば、待遇の良い他の医療機関に転籍してしまう。安全・安心な医療を提供するには最新の医療資材・機器の導入は欠かせず、経費を大幅に削るのは難しい。経費圧縮にはさまざまなジレンマがあると、多くの病院関係者が明かす。

 県は赤字に陥った病院の経営改善を後押しするため、病床を削減する県内医療機関に1床当たり410万円を支給する緊急支援策を打つ。県北地方の病院関係者は「支援金はとても助かるが根本的な解決にはならない。経営改善に努めるが、今後の物価上昇を見越した診療報酬の引き上げを実現してほしい」と話した。

 収入となる診療報酬は国が定める公定価格で、技術料や人件費に当たる「本体」部分と、薬などの価格「薬価」から成る。手術や検査など個別に単価が設定され、医療行為ごとに加算される出来高払い方式で、原則2年に一度改定される。次期改定は2026年度の予定だが、引き上げは国民の医療費負担増に直結するため抑制的になりやすいとされる。内堀雅雄知事が社会保障委員長を務める全国知事会は5月、社会経済情勢を適切に反映した診療報酬に改定するよう厚労省に緊急要請した。