舞と無(9月8日)

2025/09/08 09:04

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 永田町が舞っている。「辞めるな」のデモに、支持率巻き返しの報道―。本人も舞い上がり、続投の意を強めたと伝わっていたのだが…。「石破茂首相辞任へ」の一報は、うだる休日の静寂を破った▼去る道に舞うは、惜別、それとも一日千秋の思いの花吹雪。秋の落日に、気が急く。「次は誰、あの人、この人」。臆測、観測が早くも舞い飛ぶ。清水の舞台から飛び降りる。一念発起し、総裁選に臨む「憂党の士」はいずこに。「政局の重しが取れた」と週明け、兜町も舞って上値を追う展開か▼「まったくの無である」。本県選出国会議員のベテラン秘書は、参院選後の国政をそう見て取る。民意が割れる多党化の中、再編を目指して動くリーダーはなし。かまびすしいのは「減税」の声。強靱[きょうじん]な国力を生み出す政策論争が聞こえてくるでなし。歯止めのかからぬ少子化に、無力感すら漂う。海の向こうから届くは無理難題だ▼形も似ているが、舞と無は同源の語という(漢字源)。舞うとは、ないものを得たいと神に祈る行為を指すのだとか。ならば、国民が舞い踊って次のどなたかに願うは、決断の政治。「何も決められない」では、この国に未来はなかろう。<2025・9・8>