全国知事会は、高齢者人口がピークを迎える2040年を見据えた医療・介護提供体制の充実を求める国への提言をまとめた。物価・賃金の上昇が診療・介護報酬制度に適切に反映される仕組みの導入や、在宅医療を担う人材の確保・育成などを盛り込んだ。県内の医療機関や介護事業者から地域の実情に合った支援を求める切実な声が上がっている。厳しい国の財政状況を踏まえつつ、検討を急ぐ必要がある。
帝国データバンクによると、全国で2024(令和6)年に「倒産」「休廃業・解散」した医療機関は786件に上る。2023年の訪問介護事業者の倒産は67件でいずれも過去最多だった。県内122病院のうち、約8割に当たる95病院が直近の決算で赤字となった。32医療機関が病床計380床を9月末までに削減することも明らかになった。県内の訪問介護事業所は2024年末時点で21町村には1カ所しかなく、8町村はゼロだ。医薬品や医療・検査機器の価格高騰、スタッフ確保に向けた賃上げなどコストの増大が重荷になっているという。全国知事会は「もはや経営努力のみで対応するのは困難」として、報酬の在り方の検討を促した。
提言では、人口減少が進む地方に配慮した適切な診療報酬の設定や介護報酬の算定を要望している。オンライン診療を含む遠隔医療の普及・促進に向けた施設整備などへの支援も求めているが、山間部の過疎地を抱える福島県にとっては今後、不可欠な生活インフラであり、ぜひ実現させてほしい。
一方、厚生労働省は2024年度診療方針改定の基本方針で「国民皆保険制度を将来にわたって安定的に維持するためには経済・財政との調和を図る必要もある」との認識を示した。診療報酬は2026年度の改定に向け、これから年末にかけて議論が本格化する。介護報酬の改定は3年に1度で、2027年度に予定されている。社会保障費の増大は現役世代への負担増につながっている、との指摘も念頭に対応を求めたい。
医療費や介護給付費を削減するには、日頃の生活習慣病予防対策も重要になる。国民一人一人が健康の維持管理に努めよう。(神野誠)