
朝も夜も福島を堪能して―。来年4月から6月にかけて県内で繰り広げる大型観光企画・ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)に向け、県は通常の旅行商品に加え、早朝や夜にしかできないレジャーを楽しむ企画を充実させる。早朝のみずみずしい農産物の収穫や昆虫採集、澄んだ夜空の天体観測など、県内には「朝活」「夜活」にぴったりの資源が多くある。地域の魅力が詰まった周遊と宿泊を伴うツアーを商品化して誘客を促進し、DCの経済効果を全県に広げたい考えだ。
福島市の杉妻会館で9日に開いたDC実行委員会で県が示した。近年の旅行は観光施設や景勝地の訪問だけでなく、体験を重視する傾向にある。いかに宿泊者を増やすかにも重点が置かれる。今春のプレDC期間中、早朝の農産物収穫や夜間の歴史的建造物のプロジェクションマッピングなどが予想以上に人気を集めた。田村市常葉振興公社が今夏に展開した早朝と夜間の昆虫採集付きのツアー企画も大好評だった。
早朝の漁港のにぎわい、川面を漂う朝霧、満天の星など人々を引きつける素材は県内に数多くある。県は観光資源を商品化し、誘客を促進できると判断した。県はDCに対応した旅行企画を考えたり、首都圏への情報発信に取り組んだりする観光団体や旅行業などの民間事業者を支援する。
郡山市片平町のベリーズパーク郡山は6月に実施した早朝のブルーベリー狩り体験が話題となり、プレDC期間中に想定を超える1500人以上が来園した。園主の城清[せ]里[り]仲[な]さん(40)によると、果実は夜に蓄えた糖分を昼間に光合成で使う性質がある。早朝は甘さを味わうのに適しているという。気温が高くなる日中を避けて野外活動を楽しめる利点もある。城さんは「早朝の企画は準備が大変だったが、プレDCに背中を押してもらった。認知度の向上につながった」と話し、「朝活」「夜活」旅行の可能性を指摘する。
県は並行してDCの成果を定着させる支援にも乗り出す。県旅館ホテル生活衛生同業組合による海産物「常磐もの」の取り扱い拡大など、DCが生んだ連携体制などを継承したい狙いだ。
県観光交流課は「DC後の『アフターDC』につながる取り組みにしたい」としている。
観光庁の推計によると、プレDC期間中に当たる2025(令和7)年度4~6月期の福島県を主目的とした国内の宿泊旅行者数は延べ166万人で、前年同期より40万人増えた。このうち観光・レクリエーションは100万人で、前年同期比18万人増だった。福島県への注目の高まりを追い風に一層の観光客増を目指す。
■福島県がプロモーション支援
9日の実行委で県は、「福島県政150周年・東日本大震災15年 大ゴッホ展 夜のカフェテラス」(来年2月21日~5月10日、福島市・県立美術館)や企画展「ポケモン天文台」(4月中旬ごろ~6月下旬ごろ、郡山市)を取り入れた旅行商品を含め、貸し切りバス借り上げや旅行商品プロモーションを支援する方針も示した。