作品執筆への思い語る 福島民報ビルで政経懇話会 芥川賞作家 鈴木結生さん

2025/09/10 09:57

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福島への思いを語る鈴木さん
福島への思いを語る鈴木さん
鈴木さんの書籍を手に列ができたサイン会
鈴木さんの書籍を手に列ができたサイン会

 福島政経懇話会(会長・内堀雅雄知事)の第298回例会は9日、福島市の民報ビルで開かれた。郡山市出身で芥川賞作家の鈴木結生さん(福岡市在住)が福島を題材にした作品執筆への思いを語った。

 鈴木さんは小学3年生で東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に遭遇。小学5年生まで福島で過ごした経験や記憶は「文学を志す原体験」と振り返った。大学時代、自分の原点である福島を描いた「フクシマ小説」に着手したが「原発事故の要素も踏まえ、膨大な知識と技術、時間が必要だった」と未完のままになっている経緯を説明した。

 震災を書く上で影響を受けた、ポルトガルのリスボン大震災(1755年)や関東大震災(1923年)後に生まれた震災文学を紹介。東日本大震災後に描かれたノーベル文学賞作家の故大江健三郎さんの小説「晩年様式集」など、福島の物語を書く指針になると明かした。「自分の中の記憶をどう小説にするのか、突き詰めたい。自らの集大成とするかもしれない」と今後の創作意欲を語った。


■講演後にサイン会 笑顔で言葉交わす

 会場では、岩瀬書店(本社・福島市)が鈴木さんの書籍販売コーナーを設けた。講演後、本を買い求める聴衆の列ができた。鈴木さんは購入者の本にサインを書き、笑顔で一人一人と言葉を交わした。