東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の最終処分の実現に向け、環境省の歴代政務三役で「応援団」を発足するとした発言を巡り、伊藤忠彦復興相が釈明に追われている。事業を執行する側にありながら、応援という立場に回っては当事者意識が欠けていると批判されて当然だろう。
伊藤復興相は8月末の福島復興再生協議会後の取材で、応援団を誕生させる考えを示した。自身が2016(平成28)年から約2年間にわたり環境副大臣を務め、小泉進次郎農相が環境相経験者である点にも触れ、「(県外最終処分の実現に)われわれは責任を持って今後とも対応していかなければならない」と意気込みを示したという。
これに対し、内堀雅雄知事は2日の記者会見で、政府は県外最終処分事業の当事者であるとし、「応援という言葉は違和感があるというのが率直なところ」と不信感をあらわにした。被災自治体の首長からも同じように不満が漏れていることを明らかにした。負担を負い続ける地元と、責任を果たすべき国の意識に齟[そ]齬[ご]が生じていると指摘されても仕方あるまい。
伊藤復興相は9日の記者会見で、「私としては応援団を発足させるという趣旨ではなく、環境副大臣の経験者として責任を持って対応する考えを申し上げたに過ぎない」と説明した。自身の思いはどうであれ、閣僚の発言は重い。相手が、どのように感じ取るかが問題ではないか。
被災地からは歴代政務三役に対し、除染土壌の理解醸成に率先して取り組むべきとの声が上がる。各地で説明会などを開き、三役時代に培った経験を生かし、事業の必要性などを発信するよう期待したい。そのような取り組みの積み重ねが、全国的な議論に拡大し、最終処分の道筋が描かれるはずだ。
政府のロードマップでは、おおむね2035年をめどに最終処分場の候補地を決定すると明記したが、そこに至るまでの具体的な工程は不透明なままだ。三役経験者も自分に課された問題と受け止め、真[しん]摯[し]に向き合ってほしい。
被災地に土壌を置き去りにされては福島県の復興の足かせとなりかねない。県民の代弁者としての県の役割も問われてくる。(角田守良)