アートの力(9月12日)

2025/09/12 09:05

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 瀬戸内海の島々、新潟県越後妻有[えちごつまり]地域の里山…。共通するものは何か。答えは国際芸術祭の舞台だ。地域全体を一つの美術館に見立て、海辺や大地に作品が並ぶ▼芸術を通した地域おこしは国内各地で花盛り。鑑賞と観光を同時に楽しめるからでもある。「見る」だけではない。今年始まった千葉国際芸術祭の目玉は参加型作品だ。作家とともに市民や来訪者が焼き物を作ったり、服作りに挑戦してみたり。プロとアマの垣根が取り払われた▼規模は違えど、こちらも負けていない。会津若松市の「あいづまちなかアートプロジェクト」。12年前から行政や文化団体が一体となって取り組み、定期的に市内各所で作品展示やワークショップを展開している。この夏、交流拠点となるアートセンターを開設した。第1弾として、来場者が路上観察し、「顔のように見えるもの」などを写真やスケッチに収めて披露し合った。鑑賞したい市の収蔵作品を投票で選ぶ試みもある。芸術を身近にする工夫がにじむ▼ドイツの哲学者ニーチェは芸術を「生の大きな刺激である」と説いた。活力の源だという。創造と美は人生に欠かせない。心豊かな人々が暮らす城下町は、一層輝きを増す。<2025・9・12>