福島県内老人クラブ、会員減少続く 憩いの場維持知恵絞る 「老人」使わず/若い世代募集/賛助会員制

2025/09/15 10:25

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祇園会舘岩クラブの今後の予定を話し合う君島さんと星さん(右)
祇園会舘岩クラブの今後の予定を話し合う君島さんと星さん(右)

 高齢者の意識の変化や生活様式の多様化に伴い老人クラブの会員が減少する中、会員増を目指す活動が県内で進んでいる。南会津町舘岩地域の老人クラブは団体名から「老人」を削り、30~50代の世代を新たな仲間に迎えた。他のクラブでは正会員以外のメンバーを設ける動きも出ている。高齢者の孤独・孤立防止対策が課題となる中、地域住民が集う場を維持しようと各クラブが知恵を絞る。


■南会津・舘岩地域30~50代新たな仲間に

 南会津町舘岩地域の単位老人クラブが加盟している祇園会舘岩クラブは昨年9月に組織名を変更し、若い世代の会員を募り始めた。現在は会員約200人のうち約20人が60代以下だ。

 役員を務める人材が見つからず、クラブを構成する2団体が解散したのがきっかけだった。人口約1200人の舘岩地域は高齢化率が約54%。青年会や婦人会なども減り、住民同士が集まる場は少なくなっていた。危機感を抱いた会長の君島勝美さん(86)は60代以下がクラブに入会できる仕組みを整えた。

 下の世代がその思いに応えた。団体が解散した集落に住む会社員星正人さん(58)は昨年10月、新たなグループ「中松戸会」をつくり、祇園会舘岩クラブに加盟した。会員は60代以上に加えて30~50代の6人が入り、計11人。「お世話になってきた先輩たちに恩返ししたかった」といい、星さんは現在、祇園会舘岩クラブの副会長を務めている。別の集落でも若い世代が新たな団体を設立する動きがあるという。

 今後はこれまでクラブが開いてきた芋煮会や運動会などを幅広い世代が楽しめる内容に工夫する。県老人クラブ連合会長を務めた経験を持つ君島さんは「若い人との会話はお年寄りにとって刺激になる。一緒に老人クラブを盛り上げるモデルにしたい」と話す。


■今年度会員数4万9470人 ピーク時の7割以下に

 県老人クラブ連合会によると、今年度の県内の老人クラブ数は1218クラブ、会員数は4万9470人。ピーク時の1998(平成10)年度と比べ、クラブは半数以下、会員は7割以下に落ち込んでいる。

 老後の楽しみ方が多様化し、加入が先送りされる傾向があるのに加え、交流が制限されたコロナ禍が減少に拍車をかけた。常務理事・事務局長の北村貴志さん(51)は60代以下が加入した祇園会舘岩クラブの取り組みを「クラブを支える人材が一人でも多く育ってほしい」と期待する。

 郡山市阿久津町の老人クラブ「阿久津寿会」は会費を求めない「賛助会員」の制度を昨年度に導入。まずは活動に関心を持ってもらう狙いがあり、正会員約50~60人だったクラブに賛助会員約30人が加わった。

 クラブ名に「老人」を使用しない流れは全国的に広がっており、福島市老人クラブ連合会は「ふくこぶし福島」との愛称を活用している。