いつまで(9月17日)

2025/09/17 10:30

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 〈秋近く なるしるしにや 玉だれの 小簾[こす]の間とほし 風の涼しき〉。簾[すだれ]を通り抜ける風の涼しさに、静かな秋の訪れを知る。源実朝の作だ。細やかな感受性は、鎌倉武家の棟梁[とうりょう]を一流歌人に押し上げた▼9月半ば、湿気をはらんだ熱風が漏れくる。16日の県内は気温が上がり、伊達市梁川で猛暑日に迫る34・0度を記録した。街なかで汗をぬぐう光景は、まるで盛夏。とは言いつつ、天の猛威はきょうで幕引きだとか。明日以降、最高気温は20度台の予報が出ている。やはり、「暑さ寒さも彼岸まで」▼こちらは、いつまで続くのか。株高が止まらない。昨日の日経平均株価は、初めて節目の4万5000円を突破した。平成の低迷期がうそのようだ。企業体質が改善されたとか、米国で近く利下げがありそうだとか、解説、予想はにぎやか。日々の苦しい暮らしを思えば、経済は果たして底堅いものやら▼源氏将軍家は三代実朝まで。〈現[うつつ]とも 夢とも知らぬ 世にしあれば ありとてありと頼むべき身か〉とも詠んだ。夢か幻か分からぬこの世で、頼りにできるものなど…。兜町の小簾から突如、冷気が吹き込んでくる。そんな秋日を想像したくはないのだが。<2025・9・17>