会津若松市の鶴ケ城はきょう17日、天守閣の再建60周年を迎える。東日本を代表する名城は県内屈指の観光名所として国内外から人気を集めている。引き続き魅力を保つために景観や環境整備に努めるとともに、今後の在り方を考える節目としたい。
1593(文禄2)年に当時の領主蒲生氏郷が東日本で初の本格的な天守閣を建て、「鶴ケ城」と命名した。1868(慶応4)年の戊辰戦争では新政府軍の1カ月に及ぶ猛攻に耐えた。1874(明治7)年までに石垣と堀だけを残し、全ての建物が取り壊された。約90年を経て1965(昭和40)年に天守閣が復活した。再建について市民や議会で賛否が分かれたが、当時の市長の熱意で実現にこぎ着けた。現状を考えれば、将来を見据えた英断だったと評価できるだろう。
鶴ケ城公園には年間100万人以上が訪れ、天守閣には半数以上が入場する。インバウンド(訪日客)も年々増加傾向にある。ただ、長い年月が経過し、老朽化が目立つ箇所が出てきている。市は2024(令和6)年から50年間にわたる長寿命化計画を策定し、総額15億円を投じる予定となっている。年間にすると使える経費は3千万円に上る。優先度を見極めながら効率的に施設の改修や更新を進めてもらいたい。
天守閣以外にも美しい環境を守るために堀などの維持・管理が欠かせない。NPO法人「会津鶴ケ城を守る会」は今年6月から7月にかけて堀の周辺に生えた雑草の刈り取り作業を実施した。景観は向上したが、まだ手付かずの部分も多く残っている。水質浄化のために、堀にたまった土砂を除去する必要性も指摘されている。NPO法人単独では資金面や取り組みに限界がある。市民への協力を求めながら幅広い層が参加する運動に広げていきたい。
鶴ケ城は単なる観光資源としてだけでなく、会津人の精神的なよりどころとなっている。市の記念事業として、11月3日まで市民は無料で登閣できる。併せて城内の郷土博物館で「会津若松城のあゆみ」と題した企画展も開催されている。この機会に訪れ、改めて鶴ケ城とこれまでの歴史に理解を深め、会津の「宝」を後世に引き継ぐ決意を新たにしよう。(風間洋)