竹(9月21日)

2025/09/21 09:25

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 揺るぎない命への憧れをうたった。萩原朔太郎の代表詩集「月に吠[ほ]える」にある「竹」は、なよなよとした本人の印象を拭い去る。〈かたき地面に竹が生え 地上にするどく竹が生え まっしぐらに竹が生え〉▼戦前の詩人のように、現代人もその存在に視線を向けているだろうか。管理の足りていない竹林の放置が、全国で問題視されている。根の張りが浅い植物のため地盤が緩くなり、土砂災害につながりやすい。倒壊の恐れがあり、景観を損なう。県内では今年に入り、熊が潜んでいたとの報告が複数あり、警戒が必要だ。自然と人とのつながりが薄れた裏付けかと思うと、心寒い▼利活用法を広げていくのも人の知恵。竹片を道路の舗装材に混ぜ込むと、暑熱対策にもつながるという。餌に入れれば、家畜が食べてくれる。世界最大の竹林面積を有するインドから視察団が訪れ、わが国の研究に熱視線を送った。実用化がかなえば、古里の原風景は有効資源に変化する▼会津大短期大学部の学生は昨年、竹のドアベルやアクセサリーをデザインした。地元住民とともに伐採した素材に、新たな命が吹き込まれた。まっしぐらに鋭い感性が、古里の月に吠えている。<2025・9・21>