論説

【総裁選きょう告示】福島復興の議論を(9月22日)

2025/09/22 10:15

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 石破茂首相の後継を決める自民党総裁選がきょう22日、告示される。小泉進次郎農相、小林鷹之元経済安全保障担当相、高市早苗前経済安保相、林芳正官房長官、茂木敏充前幹事長の5人が立候補する見通しだ。各候補者には、目指すべき「国の姿」を示した上で、地に足の着いた政策論争を望む。

 今回の総裁選では、物価高対策をはじめ、少子高齢化や社会保障、安全保障など国内外の諸課題にどう向き合うのかが問われる。石破首相が進めた農政、防災、地方創生などの分野の路線継承も争点の一つだ。安倍政権以降、地方創生を地方政策の看板に掲げてきたが、東京一極集中の大きな流れは変えられなかった。都心での住宅価格の高騰や地方からの若者の流出など、ひずみを生んでいる。人口減少や地域活性化など地方が直面する課題の解決に向け、議論を深めてもらいたい。

 参院選から既に2カ月が経過したが、物価高対策などの与野党協議は停滞している。少数与党の現状を打開するためには、多数派形成に向けた野党との連携が欠かせない。政権の枠組みをどう広げていくのか。安定した政権運営の在り方についても考えを示す必要がある。

 本県が注視したいのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興と廃炉に向けた対応だ。政府は帰還困難区域を巡り、2020年代に希望する避難者全員を帰還できるようにする方針を掲げている。来年度から始まる第3期復興・創生期間の5年間はまさに正念場と言える。

 除染で出た土壌の県外処分を巡っては、政府がロードマップ(工程表)を先月策定した。ただ、おおむね2035年をめどに最終処分場の候補地を決定すると明記されたが、そこに至るまでの具体的な工程などは不透明なままだ。議論の先送りは、復興を加速する上で足かせとなる。各候補者は、将来に展望が持てるような政策を示すとともに、自分の言葉で復興への姿勢を語るべきだ。それぞれの本気度を見極めたい。

 総裁選期間中は公開討論会や、東京、名古屋、大阪の3都市での演説会などが予定されている。原子力災害を含む複合災害からの復興について、全国的な議論を促す場にしてほしい。(紺野正人)